「よい人にはよいことが起き、悪い人には悪いことが起きるはずだ」と考えてしまう認知バイアスである。
統計的には、これは因果関係を単純化して誤認することであり、現実には偶然や不公平な要因が大きく作用するにもかかわらず、人は「被害者は何か悪いことをしたから不幸になったのだ」と解釈してしまう。
提唱者
この仮説は、1960年代に社会心理学者でウォータールー大学の名誉教授 メルヴィン・J・ラーナー(Melvin J. Lerner) によって提唱された。
彼は実験を通じて、人々が被害者に対して「その人のせいだ」と責める傾向を示し、そこから公正世界仮説を理論化した。
デザイン上の利用方法と事例
デザインやUXの文脈では、公正世界仮説を理解することでユーザーがどのように「原因」と「結果」を結びつけるかに配慮できる。
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エラー画面や失敗体験
ユーザーは「自分の操作ミスで失敗した」と考えやすい。デザイン上では「あなたのせいではありません」「システムエラーです」と明示することで、不要な罪悪感や離脱を防げる。 -
社会課題を扱うサービス
貧困や差別を説明する際、「その人が努力不足だから」と思われないように、構造的要因を示すデータやストーリーを取り入れることが重要である。 -
ゲーミフィケーション
公正世界仮説を前提に「努力すれば必ず報われる」仕組みを提供すると、ユーザーのモチベーションが高まりやすい。
プロダクトやコンテンツデザインで「使える場面」
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教育アプリ
努力した分が成果として見えるようにすることで、ユーザーの「公正な世界観」を満たし、継続利用を促進できる。 -
社会的メッセージ広告
「被害者=悪い人」という誤解を避けるために、背景要因や社会的仕組みを可視化する。 -
ヘルスケアサービス
「体調不良は自己責任」という誤解を減らし、正しい医療情報や予防法を提示する。