提唱したのは、アメリカの社会心理学者レンシス・リッカート氏である。リッカート氏はリーダーシップに関わる組織のマネジメント方法を4つの分類で提唱したことでも有名である。
リッカート尺度の特徴
「はい/いいえ」のような選択肢では取得できない、設問に対する価値観の度合いを取得することができる。加えて、「どちらとも言えない」のような中立的選択肢を用意することで、回答者がありのままの意見を回答できる。
そのため、冒頭のような組織に対する評価などのデリケートな質問や、価値観などの「はい/いいえ」では測定しにくい話題に関する質問をする際に役立つ。
事前に各選択肢へスコアをつけて、設問毎または設問グループ毎に回答結果を集計する。集計したデータは、回答者を分析する際のインプット情報となる。
中立的選択肢のメリット/デメリット
「どちらとも言えない」のような中立的立場の選択肢を入れることは、研究者の立場によって賛否両論である。そのため、ここではメリット/デメリットを記載しておく。
メリット
回答を誘導させずに、回答者のあるがままの意見や考えを集められる。
冒頭で述べたように、リッカート尺度は「はい/いいえ」という選択が難しいデリケートな問題に適している。そのため、中立的選択肢を用意することで回答者の本音を引き出しやすくさせる。
デメリット
懸念点は、選択する際の理由が回答者によって異なるということである。そのため、回答した理由を適切に判別する必要がある。
多くの先行研究の結果から、選択の理由としては以下の3つがあると導き出されている。
中立的な立場を選択する理由
- 興味関心が薄いため
- 質問の意図が理解できないため
- 明確な意思表示をすると不利益を被るため
中立的選択肢における留意点
中立的選択肢の回答数が多い場合は再度実施する必要がある
アンケートの結果、中立的選択肢の回答が多い場合は、そもそも設問の表現が曖昧な可能性がある。
そのため、回答数の分布次第では、質問内容を再度精査したうえで、改めてアンケートに回答してもらう必要がある。
文化圏によって選択される頻度が異なる
文化圏によって中立的選択肢を選ぶ確率は大きく異なる研究結果も存在する。
アメリカやカナダなど個人主義の文化圏に比べて、日本や中国など集団主義の文化圏は中立的選択肢を選ぶ確率が高い傾向にある。そのため、回答者のコンテキストを十分に理解した上で、回答結果を分析する必要がある。
リッカート尺度による設問作成の留意点
留意すべき事項は多々あるが、ここではリッカート尺度の特徴とも言える留意点をピックアップする。
選択肢は数値ではなく言葉で表現する
1~5の数値で選択肢を作成すると、回答者は設問全体を熟読した上で理解する必要がある。そのため冒頭の画像のように、各選択肢を言葉で表現することで、回答者が誤解する可能性を防げる。
単極にする
一つの設問に対して、「極めてそう思う」と「全くそう思わない」のように、単極で選択肢を用意する。回答者が理解しやすく回答しやすいというメリットに加えて、作成側が選択肢を考える際にブレが生じないように設定しやすいというメリットもある。
奇数にする(どちらとも言えないを作る)
回答者がありのままを回答できるように、中間の選択肢を用意する。なお、選択肢は5個が適切と言われている。7個や9個の選択肢を用意する例もあるが、7個以上だと回答する際の基準にブレが生じてしまうという研究がある。
他にも、疑問文による設問や、冒頭の例のように「非常に満足している」から「全く満足していない」のように包括的な尺度で選択肢を作成することが推奨されている。
参考文献
SurveyMonkey社「リッカート尺度のベストプラクティスとヒント」
関連用語
ガットマン尺度
サーストン尺度