提唱者と背景
論理的な誤謬は古代ギリシャの哲学者アリストテレスが、著書『ソフィスティケイ・エレウシス(Sophistical Refutations)』において初めて体系的に分類し論じた。
その後、19世紀以降にはリチャード・ホワトリー(Richard Whately)などによって現代的な整理が進められた。
デザインへの応用と具体的事例
1. UXデザインでの意思決定支援
活用方法:意思決定の根拠として提示する根拠やデータが、論理的な誤謬を含んでいないかチェックする必要がある。
具体例:
-
ストーリーボードや提案資料に「大多数が支持しているから良い(Bandwagon)」とだけ書かれている場合、それは単なる人気論であり、根拠としては不十分である。
-
「競合他社も○○機能を搭載しているから」ではなく、「ユーザー調査で○%が必要と回答した」など、直接的証拠を提供すべきである。
2. デザインレビューでの批評精度向上
活用方法:レビュー時に「論理的飛躍」や「不適切な一般化」が行われていないか意識し、意見を厳密に検証する。
具体例:
-
デザイン「A案は好評だった。よってAがベスト案」という主張は「十分な比較を行ったのか?」という「早合点の誤謬」に陥る危険がある。
-
「ユーザーインタビューでは3人中2人が回答した」という記述も、サンプル数が少ない場合は信頼性が低いため適切な分析とはいえない。
具体的事例
シーン:プロダクト戦略会議で「X機能を追加すれば売上が上がる」と主張する場面。
-
良くある誤謬:「売れている他社製品はX機能を持っている → よってうちもX機能を搭載すべき」とする「アピール・トゥ・ポピュラム(バンドワゴン)」や「X機能が売上アップの因果であると決めつける」誤謬に陥る。
-
改善事例:「ABC社のリリース後、ユーザーの○%がその機能を評価し、当社でも同様のペルソナを対象としたA/Bテストで40%向上が見込まれる」というように、論理的にも妥当な構造で提案する。
代表的な誤謬例(デザイン面で注意)
-
バンドワゴン :(多数派に合わせるだけ)Bandwagon
→ 「他社がやっているから」ではなく、自社ユーザーの証拠を示す。 -
早まった一般化 :(少数からの全体化)Hasty Generalization
→ インタビュー3人の声だけで結論しない。
限られたサンプルから、全体に適用される結論を導き出してしまうこと。例:「私が住む地域では、最近、雨が降っていない。だから、日本全体で雨が降っていない。」 -
権威への訴え :(権威付けだけで判断)Appeal to Authority
→ 著名人が使っている=良いと飛躍しないよう、独自の根拠を示す。