ビジネスでは、対応できていない「モレ」は機会損失となり、「ダブり」があると同じリソースを割くことになり無駄が生じる。そのため、「モレもダブりもない」MECE(ミーシーまたはミッシー)の発想が重要となる。MECEを活用して、モレやダブりがない状態にすると、限りあるリソースを効率的に使うことができる。
MECEはMutually Exclusive Collectively Exhaustiveの略で、以下の意味がある。
- お互いに(Mutually)
- 重複せず(Exclusive)
- 全体に(Collectively)
- 漏れがない(Exhaustive)
世界60カ国に105以上の支社を持つグローバルな戦略系コンサルティングファーム「マッキンゼーアンドカンパニー」で作られたフレームワークで、現在はロジカルシンキングの手法として、様々な業界で広く使われている。
MECEは戦略立案にとって重要
MECEが特に重要性を増すのは戦略を立案するときである。「競合相手を上回る手を考え出す」ためには、自社の経営資源を効率的に配分して顧客のニーズを満たす必要がある。当然、経営資源には限りがあるので、配分にはモレやダブりを最小限に抑えて優先順位をつけることが重要である。
顧客のニーズを見落とす一方で、似たような製品を複数開発してしまうと、経営資源を必要な箇所ではなく無駄な箇所に投入するという「経営資源の無駄使い」をしてしまうのだ。
経営資源を有効に使うための戦略を立てるためには、MECEの考え方が重要なのである。
MECEの考え方
旅行を例にして、MECEの概念について説明する。
1.モレもダブりもない(MECEを満たしている)
旅行を「国内」と「海外」で分類した場合はモレもダブりもない。MECEが満たされている状態である。
2.モレがある
「個人の国内旅行」と「個人の海外旅行」で分類した場合、タブリはないが「法人の国内旅行」や「法人の海外旅行」が漏れている。
3.ダブりがある
「国内」と「海外」に加えて、「ツアー」を加えた場合は、「国内のツアー」「海外のツアー」というようにダブりが生じてしまう。
4.モレもダブりもある
「国内」と「法人」で分類した場合、「法人向けの国内旅行」がダブる上、海外旅行や個人向けの旅行がモレている。
次元が違うとMECEにできない
上のような単純なケースであればMECEを満たす集合(No1のみがMECEを満たしている)を作るのは容易である。しかし、現実の世界ではもっと複雑で、MECEであるかどうかを判別することが難しい。
「今期の目標は、自社サイトにおけるコンバージョン率の向上と利益率の向上です」と言われても、どこにモレやダブりがあるのかわからない。「自社サイトにおけるコンバージョン率の向上」(現場の視点)と「利益率の向上」(経営の視点)が全く違う次元(レイヤー)の話だからだ。
次元を揃えるためには、視点を揃えることと切り口を揃えることが必要である。
視点を揃える
同じ事柄でも「誰の目から見たのか」という視点が変わると全く別の捉え方になる。例えば、バーゲンセール会場にいる買い物客は「お得に商品が買える」と思うだろうが、売り場担当は「顧客が増えて忙しくなる」と思うかもしれない。これは買い物客と売り場担当という視点が原因で発生する違いである。
視点が変われば、枠組み全体も変わってくる。上の「2.漏れがある場合」では、「個人の旅行」という視点で捉えると、モレもダブりもなくMECEの状態になる。
切り口を揃える
「どういう場面を想定したか」という切り口が変わっても全く別の捉え方になる。同じりんごでも、食べ物という切り口から見れば「美味しそう」とか「甘そう」などと思うだろうし、デッサンの対象物という切り口から見れば「赤い」とか「光沢がある」と思うかもしれない。
上の「4.モレもダブりもある場合」では「国内」という旅行先としての切り口と「法人」という顧客の種別としての切り口で捉えてしまっているために、モレとダブりの両方が発生している。
戦略フレームワークはMECEの応用
戦略フレームワークは、MECEの考え方に基づいている。問題を解決するために原因を追求したり、解決策を考えるときの骨格や構造そのものなので、モレやダブりがあっては役に立たないからだ。
関連用語
- フレーミング
- 3C分析
- マーケティングの4P