人間が日常的に使う言語(自然言語)をコンピュータが理解・解析・生成できるようにする技術である。言語の構造を解析したり、意味を理解したりするために、言語学、コンピュータサイエンス、人工知能の知見を融合している。
提唱者
自然言語処理には明確な「提唱者」は存在しないが、分野を切り拓いた先駆者の一人としては、アメリカの計算機科学者である ノーム・チョムスキー(Noam Chomsky) が挙げられる。
彼の生成文法理論は、自然言語の構造を形式的に分析する道を開いた。また、人工知能の父とされる アラン・チューリング(Alan Turing) も、人間の言語理解を模倣するマシンの概念を早期に提示していた。

ノーム・チョムスキー:引用:https://en.wikipedia.org/wiki/Noam_Chomsky

アラン・チューリング: 引用 https://en.wikipedia.org/wiki/Alan_Turing
ノーム・チョムスキー 生成文法理論
1. 人間には生得的な言語能力がある
赤ちゃんは、特定の言語を教えられなくても、どんな言語でも習得できる。つまり、人間の脳には「普遍文法(Universal Grammar)」が備わっていると考えました。
2. 文の正しさは、意味ではなく構造で決まる
たとえば、以下の文:
「無意味な緑のアイデアが怒り狂って眠る」
意味はおかしくても、文法的には正しい。つまり、意味とは関係なく、私たちは「文法的に正しい文」を識別できる力がある。
3. 文法はルールで表せる
- 文 → 主語 + 述語
- 主語 → 名詞
- 述語 → 動詞 + 目的語
- 目的語 → 名詞
このように、文法を数式のようなルールの組み合わせで表現し、コンピュータにも扱えるようにしようとしたのが生成文法の大きな特徴。
イメージ図(テキスト版)
あなたの頭の中(普遍文法)
↓
「文を作るルール」が入っている
↓
“彼はりんごを食べた” ← 無限に文を作り出せる!
生成文法理論が与えた影響
- 言語学の革命:意味重視から、構造(syntax)重視へとパラダイムが変化
- 自然言語処理(NLP):コンピュータで言語を扱う基礎理論として応用
- 心理学・教育学:子どもの言語習得や認知発達の研究にも影響
デザイン領域における自然言語処理の利用方法と具体的な事例
1. ユーザーリサーチの効率化
ユーザーインタビューやアンケートの自由記述回答から、キーワード抽出・感情分析・テーマ分類などを自動化することで、リサーチ分析の効率を大幅に向上させることが可能である。
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例:大量のユーザーの声をテキストマイニングし、共通する不満やニーズを可視化してUI改善の方向性を導き出す。
2. チャットボットのUX設計
自然言語処理によって、ユーザーの質問意図を理解し、適切な応答を生成できる会話型インターフェースの設計が可能になる。UXデザイナーは、NLPの処理結果に基づいて、自然でストレスの少ない対話体験を設計できる。
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例:カスタマーサポートのチャットボットが、ユーザーの質問を意図に基づいて正しく分類し、適切な情報へ導くように設計する。
3. 音声UIの構築
音声アシスタントや音声操作のUI設計では、音声をテキストに変換(音声認識)し、そのテキストを自然言語処理で理解する工程が必要である。デザイナーは、誤認識に配慮したUI設計を行う。
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例:スマートスピーカーが命令を誤解しないよう、曖昧さの少ない言い回しや再確認機能をデザインする。
- スマートスピーカー(例:SiriやAlexa)
4. ライティング支援ツール
NLP技術を用いて、文章の文法チェック、読みやすさの評価、リライト提案などを自動で行うツールを活用できる。UXライティングやマイクロコピーの精度向上に寄与する。
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例:Figmaなどのツールと連携し、ボタン文言やエラーメッセージの一貫性やトーンをチェックする機能を導入する。
- 文書の要約や感情分析
- 翻訳アプリ(例:Google翻訳)
誰が使う?
AIやIT業界の研究者、エンジニア、データサイエンティストなど。
NLP(神経言語プログラミング)との違い
項目 | 自然言語処理(Natural Language Processing) | 神経言語プログラミング(Neuro-Linguistic Programming) |
---|---|---|
分野 | コンピュータ科学(AI・機械学習) | 心理学・自己啓発 |
目的 | 人間の言語をコンピュータに理解させる | 人間の思考・行動パターンを変える |
利用例 | AIチャット、音声アシスタント | コーチング、セルフマネジメント |
対象 | コンピュータと言語 | 人間の脳・言語・行動 |
関連用語
- AI
- AIバイアス