人間が未知や恐怖に直面したときに精神的な安定を保つために、事実を無視または否認する無意識の防衛メカニズムとして働く。
提唱者
正常性バイアスの明確な単独の提唱者は存在しないが、心理学や災害リスクマネジメントの分野で広く研究されており、米国の災害心理学者 Dennis Mileti らの研究によって、災害時の避難行動におけるバイアスとして注目されるようになった。
デザインにおける活用方法と事例
UXやサービスデザインの文脈においては、ユーザーが「問題がある」と気づいていない、あるいは「変える必要がある」と感じていない状況に直面するケースがある。
正常性バイアスが働いているユーザーに対しては、下記のようなアプローチが有効である。
- 明確なリスク提示と具体的なシナリオを通じて、危機認識を促す
- アクションを簡単にし、「今すぐ動ける」選択肢を用意する
- 数値やビジュアルで「今、何が起きているか」を直感的に伝える
【具体例】
例えば、セキュリティソフトの利用を促すプロダクトにおいて、「自分は被害に遭わない」と考えているユーザーに対し、「過去24時間でこの地域の被害件数」や「あなたと同じ条件のユーザーの感染率」などを具体的に示すことで、正常性バイアスを打ち破り、行動変容を促すデザインが可能となる。
プロダクト・コンテンツデザインでの適用
- 災害通知アプリや防災訓練UX
- ヘルスケアアプリにおける生活改善の動機づけ
- セキュリティ・プライバシー関連ツールのアラート設計
- エコ・サステナブル行動を促すUI設計
【具体的な活用例】
健康管理アプリで、喫煙者に「肺がんのリスクが上がる」とだけ表示するのではなく、「喫煙を続けた場合と、今すぐやめた場合の5年後の肺の状態を3Dビジュアライズで比較」することで、正常性バイアスを弱め、危機感と具体的なアクションへのつながりを演出することができる。
→ 対策:
- リスクの具体化(数値・図解)
- 今すぐできるアクションの提示
- 自分ごと化のストーリーテリング
関連用語
- 回避行動
- 自己防衛機制
- 危機対応UX
- リスクコミュニケーション