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OKR Objectives KeyResults

目標(Objectives)と、主要な結果(KeyResults)を設定することで、組織のミッションを達成させるフレームワーク

OKRは、組織のミッションを達成するために「目標」(Objectives)だけでなく、達成した「主要な結果」(KeyResults)を定義し、成果を出すことにフォーカスしたフレームワークである。

半導体業界のパイオニアと呼ばれたAndy Groveアンディグローブが、インテル社のために考案した。
後に当時アンディの部下だったベンチャーキャピタリストのJohn DoerrジョンドーアがGoogleに教え、シリコンバレーのユニコーン企業(※)に使われることで広まった。
※:評価額が10億ドル以上、設立10年以内の非上場のベンチャー企業

肖像アンディーグローブ

アンディー・グローブ
引用元:Wikipedia

肖像ジョンドーア

ジョン・ドーア
引用元:Twitter

主要な結果が組織の目標達成に向かわせる

あるピザのデリバリー企業の目標(Objectives)が、「どの競合他社よりも、ピザのデリバリーでお客様を喜ばせる企業となる」とする。

目標(Objectives)

どの競合他社よりも、ピザのデリバリーでお客様を喜ばせる企業となる

目標である、「お客様を喜ばせる企業」では、何をすべきかが曖昧なため、達成基準である「主要な結果(KeyResults)」を用意する。主要な結果(KeyResults)を設定する注意点は、”結果は状態を表し、アクションや成果物ではない。”ということである。数も3〜4つに絞り、具体的で実現できることが明確なものにする。

「どの競合他社よりも、ピザのデリバリーでお客様を喜ばせる企業」の主要な結果(KeyResults)は、「NPSのスコアが42以上」、「注文の評価で、5段階中、4.6以上」、「競合製品よりも美味しいという回答が75%以上」と定義できるだろう。

主要な結果(Key Results)

  • NPSのスコアが42以上
  • 注文の評価で、5段階中、4.6以上
  • 競合製品よりも美味しいという回答が75%以上

そして、組織目標の主要な結果(KeyResults)は、チームのOKRに繋げられる。例えば、ピザを注文するアプリケーションを開発するチームであれば、注文の評価が5段階中、4.6以上になることを目標(Objectives)に定めて、「メニュー画面の表示速度を30%早める」、「対応するキャッシュレス決済を2つ増やす」、「ピザの生地や具のカスタマイズ機能の利用率を20%増やす」など、主要な結果(KeyResults)として定義できる。チームの目標達成のために、個人のOKRを設定しても良い。

チームや個人の目標と組織目標に繋がりがあれば、組織全体で目標達成を目指すことができる。ハーバードビジネスレビュー誌によると、従業員と会社の目標に繋がりのある企業は、そうでない企業より、業界上位になる可能性が2倍高いという。

不確実性が高い時代に適応した目標設定

不確実性が高い中で、サービスやプロダクトを成功させるためには、従業員全体が同じ方向性を理解し、個々のチームが素早く問題に対応しながら目標に向かわなければならない。

Googleは創業当初から「世界中の情報を整理し、人々がアクセスできるようにする」という明確な方向性があった。ただし、ソリューションは今までにないものだったため、提供しながら細かく改善を繰り返す必要がある。役員がチームそれぞれに具体的な指示を出していては遅すぎるため、チームの判断で正しい方向に進むようにOKRを採用した。

Googleは自由な風土と責任を持ち、成果は達成すべき結果で評価する企業文化のため、OKRととても相性がよかった。

目標を達成できる仕組み

不確実な中で、失敗しながらも着実に目標に近づいていくには、根気もモチベーションの持続も必要である。しかし、OKRは、目標達成を後押しする仕組みが多く組み込まれている。以下、目標達成するための5つの仕組みを説明する。

1. 最重要事項にフォーカスする

目標(Objectives)はひとつ、主要な結果(KeyResults)を3〜4つに設定することで、目標達成にフォーカスできる。

企業は、顧客のクレーム対応や社内インフラの改善など、やるべき課題が多いため、目標をたくさん設定してしまいがちである。多くの目標のすべてを少しずつ進めるのでは、達成するまでに時間がかかる。ビジネス環境の変化は著しく、目標を達成した頃には効果がなく、無駄になるリスクがある。

注文画面の速度を改善して、注文の評価がどれだけ高まるかは、速度を改善してみなければわからない。効果が薄ければ、他の策を試すなど意思決定ができる。最重要事項に絞って成果を出すことで、次の期間で主要な結果(KeyResults)に何を設定すべきか判断し、目標(Objectives)へ着実に近づくためにアプローチを変えていける。

2. 透明性でチーム間の連携を作る

大きな目標達成には、チーム間の連携が不可欠である。チーム間の連携を作るために、各チームや個人が、お互いのOKRを見れるようにする。お互いのチーム目標がわかれば、コラボレーションが生まれる。

注文アプリの開発チームは、「ピザのカスタマイズ機能の利用率を20%増やす」を達成するのに、UIや機能改善だけでは実現が難しいと考えた。他の部署のOKRを検索・閲覧できれば、ピザのカスタマイズに関するOKRを立てている部署と協力できる。商品企画チームが「チーズと生地をカスタマイズで指定できるようにする」ことを主要な結果(KeyResults)としていれば、2チームで協力して目標達成に向える。

OKRの検索・閲覧には、Webアプリケーションを活用すると、キーワード検索など自分たちとコラボできるチームが探せるため便利である。

resilyの画面

OKR管理SaaS Resily
引用元:https://resily.com/

3. 進捗を可視化する

主要な結果(KeyResults)は、具体的で実現されたことが明確なものになる。定量的に設定できれば、あとどれくらいで達成できるかわかる。「競合製品よりも美味しいという回答が75%以上」の目標に対して、現在が50%であれば、あと25%上昇できれば良いとわかる。

モチベーション3.0」の著者であるダニエル・ピンクは、「最強のモチベーターは、『仕事がうまくいくこと』だ」としている。目標達成に向かって進んでいることがわかれば、ゴールまでの距離が近づくほどやる気がでる目標勾配効果が働く。

また、進捗に透明性があれば、他チームから見られる意識で、ポジティブにプレッシャーがかかり、生産性が高まるピア効果も働く。

4. 高い目標がイノベーションを生む

組織のOKRを達成するには、チームとしても高い目標が必要になる。目標が高ければ、現状の制約を外して解決策を考えるようになる。

OKRは、70%の達成でも成功とされる。目標設定の権威であるエドウィン・ロック氏が行った実験によると、低い目標で達成度の高い人より、高い目標で達成度が低い人の方がパフォーマンスが高いことがわかった。また、高い目標はヒトをワクワクさせ、高揚させる効果もあることもわかった。

OKRは報酬と連動させないことも特徴である。目標達成度を報酬に反映させてしまうと、達成できないリスクを考え、チャレンジしなくなるからだ。

5. 完璧を目指さない

OKRは、達成難易度が高いだけでなく、適切な内容で設定することも難しい。OKRの設定内容に間違いがあっても修正できるように、目標期限は3〜6ヶ月と短い期間にする。内容が適さないとわかれば、期間内でOKRを変更しても良い。期限が終了したら、必ず振り返り、適切な目標に調整しながら進めていく。

MBOとの主な違い

OKRの前から、MBO(Management By Objectives)という有名な目標管理が存在した。しかし、MBOは人事評価を目的に利用され、個人の成果が客観的に評価できるように、アクションしたか、成果物を出したかどうかで達成度を測る。アクションや成果物では、組織の目標との繋がりがなく、目標達成しづらかった。

オンライン契約書のSaaS企業の目標を例に違いを説明する。目標は、前年度比売上150%である。

MBOでは、開発部は顧客を獲得するために、新機能を10個実装することを目標にする。開発部の目標を達成するために、個人の目標は、ダッシュボード機能をリリースする、などの目標となる。しかし、ダッシュボード機能をリリースしても、顧客が増えなければ、組織目標である売上増加につながらない。

OKRでは、売上150%に対する主要な結果(KeyResults)の1つとして、「ユーザーの30%が、プレミアムプランにアップグレードする」ことを設定する。それを受けて、開発部では目標(Objectives)を「10社の顧客が、追加費用を払ってでも使いたい機能があると感じる」こととする。

この目標の主要な結果(KeyResults)は、「新機能で顧客の業務コストを20%削減させる」ことや、「新機能で顧客の契約を5%増やす」となる。新機能でコスト削減や契約の取れた実績のある状態なら、追加費用を払いたい顧客は増え、プレミアムプランにアップグレードする顧客が増えることにつながる。

MBO OKR
利用目的 人事制度に利用 組織目標の達成に利用
目標達成の評価 個人に対して、アクションや成果物で評価する 主要な結果(KeyResults)が実現されたかどうかで評価する
組織目標 前年度比売上150% O:前年度比売上150%

KR:ユーザーの30%が、プレミアムプランにアップグレードする

チーム目標 新機能を10個実装する KR:10社の顧客が、追加費用を払ってでも使いたい機能があると感じる
個人目標 ダッシュボード機能をリリースする KR:新機能で顧客の業務コストを20%削減させる

OKRは価値を伝える努力も必要

どんなに良い目標でも、紙に張り出しただけでは従業員にやる気は芽生えない。リーダーが熱心になぜやる必要があるのか、何をやるのかなど、OKRの価値を伝えていくことが必要である。

企業によっては、OKRの有用性を時間をかけて深く理解するために、合宿を行うケースもある。OKRが何かを学ぶだけではなく、チーム内で体得することはとても重要とされている。

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関連用語

ピア効果

  • 目標勾配効果
  • CFR(Conversation,Feedback,Recognition)

参考文献

BtoB人事業務アプリのコンサルタント→エンジニア→BtoCのWebディレクターを経て、再度BtoB業務アプリとなる物流プラットフォームのUIUXに挑戦。オンライン/オフライン双方でのBtoBUXを改善すべく奮闘中。

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