パラダイムシフトとは、ある分野における「ものの見方」「考え方」「前提となる枠組み(パラダイム)」が、根本的に変化することを指す言葉である。
簡潔にいえば、「当たり前がひっくり返る瞬間」である。例えば、「地球は宇宙の中心である(天動説)」という考えから、「地球が太陽の周りを回っている(地動説)」への転換は、科学史上の典型的なパラダイムシフトである。
提唱者
この概念を広めたのは、アメリカの科学哲学者 トマス・クーン(Thomas Samuel Kuhn) である。
彼は1962年の著書『科学革命の構造(The Structure of Scientific Revolutions)』において、「科学の進歩は直線的ではなく、ある時点でパラダイムが崩壊し、新しいパラダイムに置き換わることで起こる」と説明した。
デザイン上の利用方法
デザインの世界でも、パラダイムシフトは極めて重要な概念である。デザインは常に「前提を疑い、新しい見方を提案する」活動であるため、パラダイムシフトは創造の根幹に関わる。
| 分野 | 旧パラダイム | 新パラダイム(シフト後) |
|---|---|---|
| UXデザイン | 製品中心(Product-Centered) | ユーザー中心(User-Centered) |
| コンテンツデザイン | テキスト主体 | 体験や文脈重視 |
| サービスデザイン | 顧客満足度を上げる | 社会全体の関係性をデザインする |
| AIデザイン | 機能を自動化する | 人とAIの協働体験をデザインする |
| UIデザイン | 操作を美しくする | 意図を自然に伝えるインターフェースへ |
プロダクト・コンテンツデザインでの応用シーン
| シーン | パラダイムシフトの方向 | 具体例 |
|---|---|---|
| UI設計の初期段階 | 画面操作中心 → 対話中心(エージェントUI) | 例:ChatGPTやCopilot系ツールのUX |
| ブランド戦略の刷新時 | 機能訴求 → 意義訴求(Purpose Branding) | 例:Appleが「製品の性能」から「人を中心にした創造性」へ転換 |
| 教育コンテンツ設計 | 知識伝達 → 体験学習 | 例:Google for Educationのインタラクティブ教材 |
| 公共デザイン | 利用者効率化 → 共創型デザイン | 例:行政サービスをユーザー共創で再設計するプロジェクト |
| 生成AI時代のUX | 人が操作するUI → AIが補完するUX | 例:Notion AIによるドキュメント生成支援 |
関連して理解しておくべき用語
- パラダイム(Paradigm):ものの見方・前提・枠組み
- イノベーション(Innovation):技術や方法の革新。ただしパラダイムシフトはより思想的・概念的な変化を指す
- フレーム(Frame):デザイン思考などで使われる「思考の枠組み」
- メタ認知(Metacognition):自分の考え方を客観視し、枠組みを再構築する力
