主に数値、数量で表される(表すことの出来る)情報。
アンケート、実験、ログ解析などを通じて、数量化された情報を統計的に扱うことで、全体像や傾向を把握することを目的とする。
アナリティクスなどの解析ツールで表示される指数。
提唱者
定量調査は、統計学・社会調査法・心理学などの分野で長く用いられてきた手法であり、特定の一人の提唱者によって確立されたものではない。
ただし、社会調査法の基礎を築いた人物としては、エミール・デュルケーム(Émile Durkheim) や ポール・ラザースフェルド(Paul Lazarsfeld) などが代表的である。
- デュルケーム:社会現象を数量で説明しようとした近代社会学の父
- ラザースフェルド:マーケティング・世論調査における統計的手法の草分け
デザインに関わる利用方法
UXデザインやプロダクトデザインにおいて定量調査は、「仮説の検証」や「ユーザー行動の全体傾向の把握」に活用される。
- ユーザビリティテストでの成功率測定(例:90%の人がタスクを完了)
- アンケートでの「満足度スコア」「NPS(推奨度)」
- アプリ内の操作ログから「ボタンのクリック率」や「離脱ポイント」を可視化
これにより、感覚的な判断ではなく、数値に基づいたデザイン改善が可能となる。
- 定量調査で図るのが難しい、ユーザーの感情などは定性調査で調べる。
- 具体的な数値で表現されるので、目標を立てやすく基準としやすい。
利用シーンと事例
利用シーン | 具体的事例 |
---|---|
新機能のリリース判断 | A/Bテストにより、クリック率の高いデザイン案を選定する |
顧客満足度の把握 | サポート満足度を1~5段階で評価し、平均スコアを算出 |
ユーザージャーニーのボトルネック分析 | ページ離脱率や平均滞在時間の定量データから改善点を導出 |
製品改善の優先順位決定 | 問題箇所に対する発生頻度(%)を基に優先度を決定 |
手法
- チェック方式のアンケート
- 多数決
- 投票
- アクセス数
- ヒートマップ
- 定量データ
定量調査 vs 定性調査の比較チャート
比較項目 | 定量調査(Quantitative Research) | 定性調査(Qualitative Research) |
---|---|---|
目的 | 数値データを用いて「傾向」や「規模」を測定する | 意見や感情、行動の「理由」や「意味」を深掘りする |
主な手法 | アンケート、A/Bテスト、アクセス解析、クリック率測定など | インタビュー、ユーザビリティテスト、観察、日記法など |
データ形式 | 数値、割合、スコア | 言語データ、会話、行動記録 |
サンプルサイズ | 大規模(n=100~数千以上) | 小規模(n=5~30程度) |
分析手法 | 統計分析(平均値、分散、相関、回帰分析など) | コーディング、テーマ分類、ナラティブ分析など |
結果の性質 | 一般化・比較がしやすい | 背景文脈の理解やインサイトの発見がしやすい |
強み | 客観性・再現性が高い/経営報告や意思決定に使いやすい | ユーザーの本音・潜在ニーズ・新しい気づきを得やすい |
弱み | 「なぜそうなったか」は説明しにくい | 結果が主観的/一般化が難しい |
向いている場面 | デザイン施策の影響測定、KPI評価、意思決定の根拠づくり | 課題探索、新サービスの発想、ペルソナ設計、体験理解 |
代表的な質問例 | 「この機能を使った人は何%?」「どの画面が最もクリックされたか?」 | 「なぜこの機能を使わなかったのか?」「どんな場面で困ったか?」 |
まとめ
定量調査は、ユーザー体験を定性的に捉えるだけでは補えない「根拠ある判断」のための重要な補助手段である。
感覚や直感ではなく、行動データや数値に基づいて、プロダクト改善や意思決定を行うための軸となる。定性調査と併用することで、より深く正確なユーザー理解が可能となる。