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RACI(責任分担マトリックス)

プロジェクトや業務における役割と責任を明確に定義するためのフレームワーク

本フレームワークは、以下4つの役割から構成されている

  • Responsible(実行責任者):タスクを実際に実行する担当者
  • Accountable(説明責任者):最終的な承認権限と責任を持つ人物(原則として1名)
  • Consulted(相談対象者):タスク実行前や実行中に意見を求められる専門家
  • Informed(報告対象者):タスクの進捗や結果について情報を受け取る関係者

起源と歴史的背景

RACIモデルの起源は1950年代の組織管理理論にある。

1970年代にはSmith and Kannenberg社によって現在の形式へと体系化され、その後、プロジェクトマネジメントの標準的な手法として広く普及した。
1980年代から1990年代にかけて企業組織の複雑化とプロジェクト管理手法の発展により、RACIはさらに広く活用されるようになった。

2000年代以降は、PMI(Project Management Institute)の『プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK® Guide)』にも記載され、国際的な標準としての地位を確立している。

RACIマトリックスの構造と実装

RACIマトリックスは、縦軸にプロジェクトのタスクや活動、横軸に関係者(個人または役職)を配置する表形式で表現される。各セルにはR、A、C、Iのいずれかが記入される。

基本原則は以下の通りである:

  • 各タスクには1名以上のResponsibleが必要である
  • 各タスクにはちょうど1名のAccountableが必要である(いわゆる「1人のボス」の原則)
  • ConsultedおよびInformedは、必要に応じて複数名あるいはゼロ名も許容される

RACIの派生形と発展

組織のニーズに応じて、RACIにはさまざまな派生形が存在する:

  • RASCI:Support(支援者)を追加し、実行責任者を支援する役割を明確化
  • RACI-VS:Verifier(検証者)とSignatory(承認者)を追加し、品質管理を強化
  • CAIRO:Consulted, Accountable, Informed, Responsible, Omitted の順に並び、関与しない者を明示
  • DACI:Driver(推進者)、Approver(承認者)、Contributor(貢献者)、Informed(報告対象者)で構成され、意思決定に特化

RACIマトリックスの例

ソフトウェア開発やマーケティングキャンペーンにおけるRACIマトリックスの具体例は、役割と責任の関係性を明確に可視化し、プロジェクト遂行の効率を高めるうえで有効である。

実務における効果と適用場面

RACIマトリックスは、以下のような場面において特に効果を発揮する:

  • 複雑なプロジェクトにおける役割の明確化
  • 組織再編時の責任定義の再構築
  • 部門横断的なプロセスの整理
  • 新規プロジェクトの立ち上げ
  • チーム内のコミュニケーション効率化

RACIの主な利点は以下の通りである:

  • 役割と責任の明確化による混乱の回避
  • 作業の重複および責任の空白の排除
  • 意思決定プロセスの透明化
  • コミュニケーションの効率向上
  • チーム間の協力体制の強化
  • プロジェクト遅延リスクの低減
  • 現代の組織におけるRACIの活用

アジャイル開発やDevOpsの普及により、自己組織化チームやフラットな組織構造が増加する中でも、RACIマトリックスは依然として価値を持つ。

特に複数部門やチームが関与する大規模プロジェクトにおいては、責任と役割の明確化によって混乱を回避し、効率的な業務遂行を可能にする。

引用文献

  • Project Management Institute. (2021). A Guide to the Project Management Body of Knowledge (PMBOK® Guide) – Seventh Edition.
  • Smith, M., & Erwin, J. (2007). “Role & Responsibility Charting (RACI).” Project Management Forum.
  • Cabanillas, C., Resinas, M., & Ruiz-Cortés, A. (2012). “Automated Resource Assignment in BPMN Models Using RACI Matrices.” On the Move to Meaningful Internet Systems: OTM 2012.
  • Jacka, J. M., & Keller, P. J. (2009). Business Process Mapping: Improving Customer Satisfaction. John Wiley & Sons.
  • International Organization for Standardization. (2012). ISO 21500:2012 Guidance on project management.

UX DAYS TOKYO (代表) 見た目のデザインだけでなく、本質的な解決をするためにはコンサルティングが必要だと感じ、本格的なUXを学ぶため”NNG”に通い日本人としてニールセンノーマンの資格を取得。 業績が上がる実装をモットーにクライアントから喜ばれる仕事をしています。

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