統計学において「極端な結果は次回には平均に近づく傾向がある(平均への回帰)」という現象を理解せずに、別の原因を見出してしまう認知的誤りである。
例えば、テストで非常に良い点を取った生徒が次回は平均点に近づくのは偶然や統計的性質によるものであるのに、学習態度の変化など特定の原因によると誤って解釈することを指す。
広めた人
「平均への回帰(regression to the mean)」は、イギリスの統計学者 フランシス・ゴルトン(Francis Galton, 1822–1911) によって1877年頃に発見された。
「回帰の誤謬」という用語は、その統計的事実を誤解したり誤用することを指す心理学的解釈であり、特定の一人の提唱者というよりも、行動経済学や心理学(カーネマンら)の研究で広く認知された。
デザインにおける利用方法と事例
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ユーザー行動分析
アプリの利用頻度が急に増加したユーザーが次の週に減った場合、それを「機能が悪くなった」と解釈するのではなく、統計的に平均へ回帰しただけと理解することが重要である。 -
教育デザイン
生徒の成績指導で、急激に下がった点数が次回に上がった場合、単なる回帰現象である可能性が高い。誤った原因追求や不要な介入を避けるために、この考えを理解しておく必要がある。 -
ビジネス評価
広告キャンペーン直後の売上急増が次週に落ち着くのは必ずしも失敗ではない。平均への回帰の現象として理解することが適切である。
プロダクト・コンテンツデザインで「使える場面」
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アプリのKPI設計
初回ユーザーの一部が「極端に」高い利用を示しても、それが永続的な行動ではないと想定できる。平均への回帰を見越して、持続的なユーザー行動を評価指標に組み込むことが望ましい。 -
従業員体験(EX)デザイン
社内サーベイで特定の部署の満足度が極端に上下した場合、すぐに原因と結びつけるのではなく、回帰現象の可能性を考慮して施策を打つ必要がある。 -
マーケティング施策
「口コミで急に話題になったユーザー層」の行動が数週間で平均化する現象を前提に、長期的施策と短期施策を組み合わせてデザインするのが有効である。