リボイシングとは、相手の発言をそのまま繰り返すのではなく、発言の核心を理解し、整理して言い換えて返す対話技術である。
要約、表現の置き換え、重要部分の抽出などを含む。
主な役割は以下の3点である。
-
理解の確認
言い換えて返すことで、認識の一致を確認し、誤解を防ぐ。 -
知識の共有・統合
発言内容を整理して全体に共有することで、チーム内の知識が統合される。 -
信頼関係の構築
発言者に「理解しようとしている」姿勢が伝わり、対話が円滑化する。
リボイシングは、情報を単に収集するだけでなく、意味のある知識へ変換する基礎技術である。
対話を通じた知識形成
リボイシングは、「知識は一方向に伝達されるものではなく、対話の中で共に形成される」という考えに基づく技術である。
教育分野においては、生徒同士の議論や相互作用を通じて理解を深める方法として発展してきた。
発言者と聞き手が相互に影響を与えながら、共通理解や納得可能な結論を構築するために不可欠な技術である。
ユーザーの真のニーズを特定する技術
ユーザーインタビューやフィールドワークでは、ユーザーが抽象的・曖昧な表現で語ることが多い。リボイシングは、その発言から核心を取り出し、明確な言語に整理して本人に確認するプロセスで真価を発揮する。
例:
ユーザー「この操作、なんだか面倒で…」
聞き手「つまり、○○を完了するために△△の手順が必要な点が特に面倒、という理解でよいか?」
このやり取りにより、曖昧な発言を具体的な課題定義へと変換できる。
的外れな改善を防ぎ、本質的課題を発見する
リボイシングは、表面的な不満から本質的な問題を見抜く際にも有効である。
例として、あるB2Bプロジェクトでは、利用者が「データ連携のせいで仕事が滞る」と述べたが、担当者はリボイシングによって具体化し確認した。
「AシステムからBシステムにデータを移す際、形式変更のために月5時間の修正作業が発生している、という理解でよろしいでしょうか?」
利用者はこれを部分的に認めつつ、実際のボトルネックは別にあると指摘した。
結果、チームは真の課題である承認プロセスの改善に集中し、価値の高い成果を得た。
リボイシングは、抽象的な不満を計測可能な問題に変え、改善すべきポイントを明確にする技術である。
対立の調整と合意形成
複数部署が関わる議論では、部門ごとに意見が対立しやすい。リボイシングを使う進行役は、異なる主張に共通する価値を抽出し、議論を建設的に導くことができる。
例:
営業部門「機能を早くリリースしたい」
法務部門「リスクチェックを徹底したい」
進行役
「要するに、ビジネスチャンスを逃さず、かつ将来のリスクを確実に避けるための最適な方法を、迅速に合意したいという点で一致している、と理解してよいか?」
対立しているように見える意見の共通目的を示すことで、合意形成が容易になる。
関連概念
-
傾聴(Active Listening)
相手の発言を丁寧に聞き、理解に努める姿勢。リボイシングはその理解を確認する具体的方法である。 -
パラフレーズ(Paraphrasing)
内容を要約したり言い換える行為。リボイシングはパラフレーズを含むが、知識の明確化と共通理解の形成を目的とする点で異なる。 -
オウム返し(Echoing/Parroting)
発言を一字一句繰り返す行為。リボイシングは内容の整理・明確化を行うため、より高度な技術である。