セレンディビリティとは、ユーザーが意図的に探していたもの以外に、思いがけず有益で価値のある情報や体験に出会える可能性、あるいはそれをデザインによって実現する能力を指す概念である。
「セレンディピティ(思わぬ発見の幸運)」を情報設計やUXの領域に応用し、偶然性を仕組みとして利用する考え方である。
提唱者
この用語はエリカ・ローズンフェルド(Erika Rosenfeld)ら情報科学の研究者によって情報検索の文脈で扱われるようになったが、特定の一人の「提唱者」が厳密に存在する概念ではなく、情報行動学やHCI(Human-Computer Interaction)の中で発展してきたものである。
デザイン上に関わる利用方法
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探索と発見の両立
検索やレコメンド機能において、ユーザーが求める「確実な情報」だけでなく、関連する未知の情報を提示することで、予期せぬ価値を生み出せる。 -
情報の配置設計
ナビゲーションやコンテンツカードのデザインにおいて、主要経路のそばに「寄り道」できる情報を置くことで、ユーザーに偶然の発見を提供できる。 -
多様性の確保
アルゴリズムによる最適化だけではなく、多様で少し意外性のある情報を混ぜることが、セレンディビリティを高める。
具体的な事例
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SpotifyやApple Musicのプレイリスト
聴いているジャンルに基づきながら、普段聴かないアーティストを混ぜることで新しい音楽との出会いを生む。 -
Amazonの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」
目的の商品だけでなく、想定外の有用な商品発見を促す。 -
ニュースアプリの「あなたへのおすすめ記事」
興味関心に関連するが直接検索しなかった記事を提示することで、新しい学びや気づきを提供できる。
プロダクトやコンテンツデザインの観点で「この場面に使えるかな?」という具体例
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学習プラットフォーム
ユーザーが受講中の講座に関連して「おすすめの補助教材」や「他の学習者が次に学んだテーマ」を提示すると、学びの広がりを体験できる。 -
観光アプリ
目的地の案内だけでなく「近くにある隠れスポット」や「地元の人がおすすめする体験」を表示することで、旅行者の体験価値を高められる。 -
企業内ナレッジシェア
業務マニュアルの検索結果に「関連する成功事例」や「似た課題を解決した別部門の資料」を提示すると、社員が予期せぬ解決策に出会える。