TOP UX用語 藁人形論法

藁人形論法 straw-man argument

相手の主張をわざと極端あるいは単純化して批判することで、本来の主張を攻撃したかのように装う論理的誤謬

相手の主張をわざと極端あるいは単純化した「藁人形」を立て、それを批判することで、本来の主張を攻撃したかのように装う論理的誤謬である。

実際には相手の正当な反論を論破せず、簡単に倒せる虚構の主張を攻撃する手法である。ストローマン論法とも呼ばれる。

起源と歴史

古代ギリシャのアリストテレスの議論に端を発し、ステュアート・チェイス(Stuart Chase)が1956年の著書『Guides to Straight Thinking』で正式に「非形式的誤謬」として識別した。名称はか弱い藁人形を簡単に倒せることに由来し、1620年代には比喩として使用された。

デザインへの応用と具体例

① プロジェクト提案・仕様策定の場面

問題:開発チームが利害関係者の要求を誤解し、単純化して返答すると、本来の問題を解決する機会を失う。
対策:相手の意図を正確にヒアリングし、元の要求や背景に沿った具体的な課題定義を行う。

② UX/UI設計レビュー

:デザイナーが「このボタンは冗長で、ユーザーに混乱を与える」と指摘。
開発側が「だから全部削除すべきだ」という誤解を返してしまうと、本当の問題が対話なしに黙殺される可能性がある。
対策:まず「どの部分が、どう混乱を招くのか」を整理し、建設的に議論することで正しい調整につなげる。

③ コンテンツ設計とメッセージング

:マーケ担当が「もっとライトな文調にしろ」という要求に対し、「全部をカジュアルにすればいいんだな」と単純化し、本来のターゲットであるシニア層には不適切なトーンになってしまう。
対策:どのセグメントに対して、どの程度のトーンであるべきかを具体化し、対象に応じた調整を行う。

「この場面に使えるかな?」シーン

場面:機能追加に対し「これって要る?」と部外者から突っ込まれた時。

  • 典型的な藁人形論法:
    「要らないんじゃない?」の背景として「既存機能で十分だ」との反論を「開発は意味ないと思ってるの?」と単純化して論争化。

  • 改善例:
    「既存機能で代替できるのか?本当に必要か?」など、要件や優先度を整理し、目的と必要性に沿った判断を促すフレームに立ち返る。

デザイン現場での注意事項

指摘パターン 改善アプローチ
単純化しすぎて本質を見失う 相手の言葉をペアリングし、意図と背景を丁寧に確認する。
対話より議論の勝ち負け優先 問題点の本質を議論し、応じた解決策を共に考える姿勢を持つ。
ミスコミュニケーションが応酬に発展 ファシリテーションを挟んで発言整理を行う。

まとめ

相手の主張の本質に向き合わず、相手を論破した「錯覚」を得るための手法

サービス設計やプロダクト開発の現場では、これを避けるために、「相手が本当に何を求めているのか」を丁寧に掘り下げるコミュニケーションや、誤解が生じない対話の設計が不可欠である。設計プロセスや会議運営の改善にも活用できる内容である。

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UX DAYS TOKYO オーガナイザ/デジタルマーケティングコンサルタント 著書 ・ノンデザイナーでもわかる UX+理論で作るWebデザインGoogle Search Consoleの教科書 毎年春に行われているUX DAYS TOKYOは私自身の学びの場にもなっています。学んだ知識を実践し勉強会やブログなどでフィードバックしています。 UXは奥が深いので、みなさん一緒に勉強していきましょう! スローガンは「早く学ぶより深く学ぶ」「本質のUXを突き止める」です。

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