結果だけを見て「失敗例」や「脱落者」を無視することで、全体像を誤って把握することになる。
たとえば、スタートアップ企業の成功事例だけを集めて「〇〇すれば成功する」と結論づけるのは、失敗した企業の分析を除外しており、統計的に偏った推論となる。
提唱者
エイブラハム・ウォールド(引用)https://stat.columbia.edu/founders-postdoctoral-fellowship/
この概念が広く知られるようになったのは、第二次世界大戦中のエイブラハム・ウォールド(Abraham Wald)の研究による。
彼は、撃墜を免れて帰還した戦闘機の弾痕の分布を分析し、「弾が当たっていない場所(=撃墜された機体の致命部位)を補強すべき」と指摘したことで有名である。
デザインにおける利用方法
プロダクトやUXデザインにおいては、生存者バイアスを避けることがユーザー全体を正しく理解するために重要である。
たとえば、アプリの使い方に関するインタビューを「継続利用しているユーザー」のみを対象にすると、離脱したユーザーの課題や障害が見えなくなる。
そのため、設計や評価においては、「声が聞こえないユーザー」を意識的に拾うデザインリサーチが必要である。
学びや思考のうえでの注意点
「成功事例特集」などの記事を鵜呑みにしてしまうことで、本意を知ることができなくなる。
具体例
シーン | 誤解・誤用 | バイアス回避の工夫 |
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SaaSの機能評価 | 残っているユーザーのフィードバックだけで「新機能は好評」と判断する | 離脱者やアクティブでないユーザーに対するリサーチも併用する。 |
UI改善 | 利用者の行動ログで「よく使われている導線」をベースにUIを再設計 | 使われていない導線の「理由」や、途中離脱したユーザーの視点も収集する。 |
ABテスト | コンバージョンしたユーザーだけを分析して成功要因を探る | 失敗群の行動や条件も比較して、全体傾向を判断する。 |