自分を平均以上の能力を持っていて、他の人より優れていると錯覚してしまう効果。別名として、平均以上効果という呼び方もある。
「自分は優れた人間である」と思い込む「優越の錯覚」という心理効果によって起きる現象の一つ。具体的には「自分は運転の能力が高いから交通事故を起こさない」や「自分は他の人より意思が強いからいつでも禁煙することができる」と客観的な根拠無しに思うことである。
能力が低い人ほど「自分は平均以上である」だと思い込む傾向が強い。レイク・ウォビゴン効果に陥って自分を過大評価しないためには、他者からのフィードバックを素直に受け入れることが重要である。
アメリカのホープ大学の心理学者であるDavid Myersが提唱した。
全てが平均以上の人が住む架空の
村「レイク・ウォビゴン」に由来
レイク・ウォビゴン、とは、Garrison Keillorの小説「レイク・ウォビゴンの人々」に登場する架空の村の名前に由来している。小説に登場する村の住民は全て平均以上に美男美女で、子供たちはみんな平均以上に優れている設定である。
レイク・ウォビゴン効果とは、自分もレイク・ウォビゴンの村人たちのように平均以上の能力を持っていると錯覚する傾向で、社会心理学の「優越の錯覚」によって起きる現象である。
95%は「自分は事故を起こさない」
と思い込んでいる
レイク・ウォビゴン効果の代表的な事例は、車を運転する人が「自分は事故を起こさない」と思い込む傾向である。ある調査によると、車を運転する95%の人が「自分は他の運転手よりも優秀なので、事故を起こすことはない」と思い込んでいる。しかし、自分が事故を起こさないという客観的な根拠はない。アクセルとブレーキを間違えて事故を起こしてしまうニュースを見て、「そんなことが起きるはずない」と思ってしまうことが、まさにレイク・ウォビゴン効果に陥っている事例である。
能力が低い人ほど
自己を過大評価する
レイク・ウォビゴン効果は、能力が低い人ほど陥りやすい。原因としては、能力が低い人ほど自分を客観視できず、過大評価してしまうダニング・クルーガー効果や、成功した時は自身の能力が高いと思い、失敗した時は環境や他者に原因を求める自己奉仕バイアスが発生するためだ。
大学の試験において、実際の試験結果と自己評価の乖離を調べた調査を行った。はじめに試験を受けてもらい、結果を返される前にそれぞれの生徒に「自分がどれほどできたと思ったか」という自己評価を行ってもらった。
調査では、学生を上位層・中位層・下位層の3区分に分けて、試験結果と自己評価の乖離を計測した。計測した結果、上位層の学生は試験結果と自己評価の乖離が小さく、下位層の学生は自己評価の乖離が大きかった。
試験結果に比べて自己評価の点数が10点以上高い人たちは、赤い丸で表現している下位層の学生が多くプロットされている。この結果から「能力が低い人ほど自己評価が高くなる」という点でダニング・クルーガー効果との関係性が見て取れる。また、下位層の学生に試験結果が低かった理由をアンケートで確認すると、テスト環境や教師に原因を感じている傾向がある。成功した時は自分の能力のおかげだと考え、失敗した時は環境や他者に原因を見出す点は、自己奉仕バイアスに関係している。
自己の過大評価を防ぐためには、
他者評価を素直に受け入れる
レイク・ウォビゴン効果に陥らないようにするためには、客観的に自分を評価する他者からのフィードバックを素直に受け入れることが重要である。
客観的な評価を集める方法の一つは、職場の同僚からもらう360度評価である。周囲からのフィードバックを素直に受け止め、客観的な情報で自分の能力を測ることが重要である。
客観的な情報がないまま「自分は優れている」と思い込んでしまうと、「自分は最初から出来ていた」と思う後知恵バイアスに陥ってしまい、成長する機会を失ってしまう。
関連用語
- 正常性バイアス
- 自己奉仕バイアス
- 優越の錯覚
参考サイト
- Drowning in Lake Wobegon: The Hidden Burden of Incompetence and its Challenge for Education
- Illusory Superiority – wikipedia
参考文献
- 知ってるつもり――無知の科学』,早川書房 (2018)『