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後知恵バイアス(後知恵の偏り) hindsight bias

物事が起こった後に「予測できた、そうだと思った」と考える心理バイアス

何かしらの事象が起きてから、予測できないことまで予測できていたかのように考える心理バイアス。トラブルが発生した時に「問題になると思っていた」と話す人が多い理由は、後知恵バイアスが働いているためである。

1970年代から心理学で後知恵バイアスの存在が研究されるようになった。心理学の分野で提唱される以前にも、さまざまな歴史家や哲学者、医師が後知恵バイアスの存在を言及していた。1970年代初頭にBaruch Fischhoffバルーフ・フィッシュホフRuth Beythラッシュ・ベイスが後知恵バイアスの存在を立証する研究を行なった。

肖像 バルーフ・フィッシュホフ氏

バルーフ・フィッシュホフ氏
引用元:Carnegie Mellon University

「自分は予測できていた」と
過大評価してしまう

1975年にフィッシュホフ氏とベイス氏は、リチャード・ニクソン米大統領が北京とモスクワを訪問する際の行動を、被験者に予想してもらう実験を行なった。予想してもらう行動は「ニクソン大統領は毛沢東議長に会う」「ニクソン大統領は訪問が成功したと発表する」など、いくつか事前に用意しておいた。

訪問前に、用意した内容が実現する確率を予想してもらった。

帰国後、同じ被験者に対して「実現する確率はどのくらいだと予想していたか」を思い出してもらった。

例えば、毛沢東議長に会う確率について、訪問前は40%と予想した人が、実際に会ったという事実がおきた後に、自分の予想を思い出してもらったところ「60%と予想していた」と回答した。

調査の結果、「大統領の行動を予想していた」と自分を過大評価する傾向が明らかになった。

実験結果 事象が起きた後は行動が予測できたと考える傾向がある

事象が起きた後の方が「予測できた」と考える傾向がある

イノベーションのきっかけを
奪う後知恵バイアス

後知恵バイアスが働く典型的な事例は「コロンブスの卵」である。「コロンブスの卵」とは「誰でもできることを、最初に実行し成功するのは難しい」という意味の慣用句である。

答えが分からない場合でも、答えを知ってしまうと後知恵バイアスが働いて「そうだと思っていた」「そんなの当たり前である」と考えてしまう。

ビジネスの場面でも、答えを知って「そうだと思っていた」と深く考えずに結論を出してしまうことがある。例えば、他社の失敗事例を見て「うまくいかないと思っていた」と話すだけでは、原因や理由を理解できず、同じような失敗をしてしまう。

イメージ 失敗例の批判に意味はない

失敗した結果を批判しても、自分の糧にはならない

いかなる場合でも「なぜそうなるのか」「自分に足りていなかった考えは何か」を自問することで、自分の頭で考える習慣が身につく。自分で考えて答えを導き出すことが、新たなイノベーションのきっかけとなる。

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参考サイト

参考文献

現在、システムエンジニアとして自社サービスの企画/開発を行なっています。 ユーザーファーストなサービス開発を心がけたいという思いから、UX DAYS TOKYOのスタッフとして活動を始めました。 最近はリサーチスキルを伸ばすために統計学を勉強している。

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