ブランド・製品・サービスに関してインタビューやアンケートなどで直接尋ねるのではなく、擬人化して手紙を書いて感情を表現してもらう調査手法。2009年にコンサルティングファームSmart Designによって提唱された。
ユーザーと、ブランド・製品・サービスとの関係が、人と人との関係に似ているという前提に基づいて擬人化を利用する。
ブランド・プロダクトを擬人化させ、ユーザーに手紙(ラブレター・ブレークアップレター)を記載して感情を表現してもらう。この手法を用いることで、ユーザーが生活の中で利用する文脈や感情をよりよく理解するのに役立つ。
愛情を表現するラブレター
ラブレターは愛を伝える手紙ではあるが、一般的なラブレターというより、愛情をもった文章という意味でラブレターという言葉を利用されている。ラブレターには、被験者にブランド・製品・サービスとの出会いを通じて感じた喜びや愛を綴ってもらう。
例:ある炭酸飲料へのラブレター(引用:Design Thinking Activity #1 – The Love/Breakup Letter)
意訳:
親愛なる●●●●へ
どんなにあなたを愛しているか。コーヒーなんて忘れてしまうほど。朝起きたらまず私の頭の中を満たす飲み物は、泡立ったあなた。
クールな缶の音、グラスに注いだときに立てる炭酸の音が大好きです。天国にいるような香りは口の中にはよだれが出てくるほど。
私を甘さで満たしてくれてありがとう。ダイヤモンドは女の子の親友と言いますが、あなたは私のソウルメイトです。
愛を込めて
サリーより
ブレークアップレター
ブレークアップレターは関係が潰れ、解消し別れを告げるための手紙である。
調査の参加者にはブランド・製品・サービスとの関係性がいつ・どこで・どのように壊れていったかの感情を綴ってもらう。
例:ある炭酸飲料へのブレークアップレター(引用:Design Thinking Activity #1 – The Love/Breakup Letter)
意訳:
よう、●●●●
君にはがっかりさせられた。飲むと高額な歯医者の治療費がかかるよ。
キッチンの蛇口から出る水は無料で飲めるのに、僕は財布の紐を緩めて君を大量に買っていた。
350mlを飲み干すといっきに1日分の砂糖消費量を超えてしまう。
Tシャツにこぼそうものなら、君のシロップでついた染みはずっと残り続ける。
これでお別れだ
ハリーより
実施手法
フォーカスグループなど複数人が参加する調査の場で行うのが良い。
参加者にその場で手紙を書いてもらう。書く時間は最大で10分ほどが良い。最後に手紙を読み上げてもらう。
読み上げ時の表情や声のトーンなどを録画で記録しておくことも役に立つ。
以下の動画で実践しているワークショップを見ることができる。
https://www.youtube.com/watch?v=fl-E1FKo-7E
実際にサービス/ブランドへのラブレターやブレークアップレターを読み上げているシーンもあるので、参考になる動画である。
メリット&デメリット
ラブレター&ブレークアップレター法には以下のようなメリット・デメリットがある。
メリット
・ブランドや製品に対する感情などを理解し共通認識を持つことができる
・ラブレター・ブレークアップレターという形式で表現することで、製品への感謝や称賛、欲求不満や嫌悪感といった直接的には伝えづらい感情を引き出すことができる
デメリット
・参加者の感情状態や場の雰囲気に結果が左右されてしまうことがある
・ジェンダーバイアスに影響されてしまうことがある
メリットだけでなくデメリットも考慮しつつ、グループ・インタビューなどの一部として取り入れることができれば、より定性的な共通認識を得るために役に立つ調査手法である。