TOP UX用語 思考・マインド・バイアス 時間選好

時間選好 Time Preference

同じ価値の報酬であれば「今すぐ得られるもの」を「将来得られるもの」より高く評価する傾向

人が「現在の消費や利益」と「将来の消費や利益」をどのように比較・評価するかを示す概念である。

一般に、人は同じ価値の報酬であれば「今すぐ得られるもの」を「将来得られるもの」より高く評価する傾向があり、これを正の時間選好という。逆に「将来の報酬」をより重視する場合は負の時間選好と呼ばれる。

経済学的には、効用関数に「割引因子」を導入して、現在価値として数理的に表現される(例:指数割引、双曲割引)。

デザイン上の活用方法

時間選好は、UXやプロダクト設計において「今すぐ得られる価値」をどう見せるかに大きく関わる。ユーザーは将来のメリットよりも直近のリターンを重視するため、デザインで以下の工夫が有効である。

  • 即時報酬の強調
    例:健康アプリで「将来の健康改善」より「今日1日の運動で獲得できるバッジ」や「即座の達成感」を提示する。

  • 待ち時間の心理的短縮
    例:ECサイトで配送まで数日かかるとしても「発送準備中」など進捗を見せることで、将来の報酬を近く感じさせる。

  • 小さな短期インセンティブの積み上げ
    例:学習アプリで「毎日ログインでポイント獲得」を設けることで、将来の学習効果(大きいが遠い)を補強する。

提唱者

時間選好という概念自体は古くから存在し、最も有名な定式化は ユージン・フォン・ベーム=バヴェルク(Eugen von Böhm-Bawerk, 1851–1914) が資本理論の中で論じたものである。
その後、ポール・サミュエルソン(Paul Samuelson, 1937)が指数型割引モデルを提示し、現代の標準的な定義が定着した。

この場面で使えるデザイン事例

  • サブスクリプションサービス
    将来の「お得さ」よりも「今日からすぐ使える便利さ」を強調。例:「今すぐ視聴開始」「初月無料で体験」。

  • 金融アプリ
    長期投資のリターンを訴求する際、途中の短期的メリット(配当、成長記録、即時の可視化)を組み込む。

  • 習慣化アプリ
    「将来痩せる」よりも「今日1日で●カロリー消費」と具体的な即時成果を提示。

img-6

UX DAYS TOKYO オーガナイザ/デジタルマーケティングコンサルタント 著書 ・ノンデザイナーでもわかる UX+理論で作るWebデザインGoogle Search Consoleの教科書 毎年春に行われているUX DAYS TOKYOは私自身の学びの場にもなっています。学んだ知識を実践し勉強会やブログなどでフィードバックしています。 UXは奥が深いので、みなさん一緒に勉強していきましょう! スローガンは「早く学ぶより深く学ぶ」「本質のUXを突き止める」です。

「UX用語」のカテゴリー