ロボットやCGアニメーションの外観や仕草を人間に近づけていくと、親近感や好感度が増すが、「人間に極めて近い段階」になると違和感や嫌悪感を覚える。
ロボット工学者の森政弘氏は、人間への類似度と好感度をグラフにした際に、ある地点で好感度が大きく落ち込むことに気づき、1970年に「不気味の谷」と提唱した。
このグラフのように、工業用ロボットなど機械的なロボットでは親近感や好感は低いが、人に近づけるにつれ親近感が増していく。しかし、ロボットの外見が人間にかなり近くなってきたあたりで急に違和感を感じ嫌悪感を感じるようになる。
森氏の書籍「ロボット考学と人間」では、不気味の谷の例としてハリウッド映画の「ファイナルファンタジー」をあげている。
不気味だと感じてしまう心理
不気味だと感じるのは、人に類似するロボットが死人をイメージさせて恐怖を与えるからではないかと、森氏は述べている。
他の研究者が唱えている恐怖を感じる理由としては、人に近づくことによってロボットが心を持っているのではという不安や、目は見開いているのに口だけ笑っている表情にサイコパスを感じる、というものがある。
動きによって変化する親近感と違和感
ロボットに動きをつけることで、不気味の谷はより顕著になる。
本田技研工業株式会社の二足歩行ロボットASIMOは、ダンスをしたり歩いたりと自由に動くことでより親近感を感じる。
しかし、不気味の谷に位置するロボットに動きが加わると更なる嫌悪感や違和感を引き起こす。
ロボットが働くことでギネス認定された「変なホテル」のフロント受付ロボットは、口元だけ微笑んでいて目を見開いたまま口や身体が動く、まばたきをするなどの動きに違和感を感じる。
不気味の谷の回避方法
不気味の谷を回避するためには、不気味の谷より手前を意識して人間に似せない、人間以外をモチーフにする、極限まで人間に近づけるという3つの回避方法がある。
人間に似せない、人間以外をモチーフにする方法をとる場合、丸みのある特徴などで幼児性をもたせることにより好感を抱くベビーフェイス効果や、生き物の特性を模倣し親近感をもたせる擬態を意識することにより、親しみやすさをもたせることができる。
家族型ロボットのLOVOTは、身体に対して大きな頭や丸みのある頬などを実装し、親しみやすさのあるロボットになっている。
人間に極限まで近づける方法をとる場合、ロボットと人間の見分けがつかない程の見た目にする必要があると言われている。ディズニーグループの技術研究開発部門であるDisney Researchでは、機械学習で3Dモデルの顔の表情を極限まで人間に近づけるための研究をしている。
関連用語
参考記事
- GetRobo
- Uncanny valley – Wikipedia
- Navigating a social world with robot partners: A quantitative cartography of the Uncanny Valley
- ASIMO
- LOVOT
- ディズニーの微妙な表情も表現する3D技術は「不気味の谷」を超えられるかも
- This article is more than 5 years old Uncanny valley: why we find human-like robots and dolls so creepy
- Uncanny valley: why we find human-like robots and dolls so creepy