大規模言語モデル(LLM)などのAI支援ツールに「こういう動きをしてほしい」という意図を自然言語で伝え、それに応じてコードを生成・改良させるスタイルのソフトウェア開発手法である。手作業でコードを細かく書く代わりに、アイデアをプロンプトとして伝え、結果を試して見て、フィードバックを与えて改善する反復的なワークフローが特徴である。
従来のコーディング手法から離れ、感覚や直感を重視し、コードの存在を忘れるほどにAIにコーディングを委ねる点が特徴である。特に、LLM(大規模言語モデル)やAIツールを活用することで、ユーザーはキーボードにほとんど触れずにコーディングを行うことが可能となる。
提唱者

Andrej Karpathy(アンドレイ・カーパシ)氏 出典元 https://karpathy.ai/
2025年3月25日に、アンドレイ・カーパシ(Andrej Karpathy)氏によって提唱された新しいコーディングスタイルである。この概念は、プログラミングにおけるアプローチの大きな変革を示している。
アンドレイ・カーパシは、AIと機械学習の分野で著名な研究者であり、スタンフォード大学で博士号を取得している。OpenAIのメンバーとしてAI研究に貢献し、2017年から2022年まではTeslaにおいて自動運転チームのディレクターを務めた。特にニューラルネットワークやリカレントニューラルネットワークの研究で知られ、画像認識や自然言語処理への応用において顕著な業績を残している。また、教育活動にも力を注ぎ、オンラインコースやブログを通じて知識を広く共有してきた。彼の業績は世界中の研究者に大きな影響を与えている。
Karpathyはこの手法を以下のように表現している。
「where you fully give in to the vibes, embrace exponentials, and forget that the code even exists(感じるままに任せ、指数的な伸びを受け入れ、コードが存在することを忘れるような)」
バイブ・コーディングの特徴
直感的な操作:
ユーザーは「サイドバーのパディングを半分にしてください」といった簡単な指示をAIに与えるだけで、複雑なコードを書く必要がない。
受動的な学習:
コードの差分を確認することなく、AIが生成したコードをそのまま受け入れるスタイルである。エラーメッセージが出た場合も、コピペによって対応することが多い。
指数的成長:
AIの進化に伴い、コードはユーザーの理解を超えて成長し続ける。これにより、ユーザーは新しい技術や手法を学習しつつ、プロジェクトを推進できる。
プロジェクトの作成:
Vibe Codingにおけるプロジェクトやウェブアプリの作成は、「見る」「話す」「実行する」「コピペする」といった行為を中心に進められる。
デザイン上の利用方法と具体的事例
利用方法
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開発速度を優先するプロトタイピングに適用することで、アイデアを迅速に可視化できるためデザイナー・プロダクトマネージャーがイメージを共有しやすくなる。
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コードの構造や品質よりも、まず動くものを早く作ることを重視する。後からコードの整理やテストを加える「先動作・後改善」型設計が合致する。
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フィードバックループを重視し、AIの生成を試しては調整し、より望ましい結果になるまでプロンプトを微調整する。
具体例
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プロトタイプ作成:プロダクトマネージャーが「ユーザーのログイン画面を作ってほしい」とAIに伝えて初版を生成し、その後「こここう直して、こう機能させて」などのフィードバックを重ねて完成させる。
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内部ツールの作成:社内効率化ツールをデザイナーがアイデアベースで作りたい場合、コードの深い知識がなくても Vibe Coding で機能を試作し、エンジニアが仕上げを行う。
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教育・ハッカソン:学生などコーディング経験が少ない参加者に対して、Vibe Coding を使ってアイデアを形にする体験を提供し、創造力を刺激する。
利点と注意点
| 利点 | 注意点 |
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| 高速なプロトタイピングが可能でアイデア検証が早まる。 | 生成されたコードの可読性・保守性が低いことがある。 (ウィキペディア) |
| 非エンジニアや初学者にもアイデアを形にする道が開ける。 | セキュリティ脆弱性やバグを含むリスクがある。動作確認やテストが不十分になりがち。 (ウィキペディア) |
| 開発者は細部の実装ではなく、ユーザー体験や機能要件に集中できる。 | 長期的な製品あるいは大規模システムには、十分なコードレビューや品質保証プロセスが必要。 |