根拠が乏しい主張や調査が、繰り返し引用されることで信頼できる事実のように扱われてしまう現象である。
最初の出典に十分な裏付けがなくても、多くの論文や記事で参照されることで権威づけがなされ、あたかも「確立された事実」として流通する。
この名称は、A.A.ミルンの童話『くまのプーさん』に登場する想像上の生物「ウーズル」に由来する。プーとピグレットが雪の上の足跡を「ウーズルのものだ」と思い込み、ぐるぐる同じ場所を回った結果、ますます証拠が積み重なったように錯覚した場面から名づけられた。
提唱者
この効果は、社会学者の ベバリー・ホートン(Beverly Houghton) が1979年に作った造語とされる。特に家庭内暴力や児童虐待に関する研究領域で、乏しい実証データが繰り返し引用され、事実のように扱われたことが指摘されている。
デザイン上の利用方法と具体事例
デザインやUXの領域でも、ウーズル効果は重要である。特に ユーザー調査や統計データの扱い に影響する。
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利用方法
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デザインチーム内で「よく引用されている調査」だからといって無批判に受け入れず、一次情報(原典)に立ち返る姿勢を持つことが重要である。
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説得力を持たせるために「出典の数」ではなく「出典の質」に注目するよう、資料設計やプレゼンで強調する。
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具体的事例
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「ユーザーは3クリック以内で離脱する」という有名なUXルールがあるが、これは実際の実証研究に基づかず、繰り返し引用されることで事実のように扱われた典型例である。
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プロダクト開発時に「〇〇世代は動画を好む」「ユーザーは青色を信頼する」などの言説が、多くの二次資料を経て広まっているが、実際には限定的な調査から拡散したウーズル効果の可能性がある。
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プロダクト・コンテンツデザインの観点での応用シーン
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ユーザーペルソナ設計:マーケティング調査の二次引用ではなく、自社での定性・定量調査を基に裏付けを作る。
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デザイン原則の説明資料:有名な「UXの神話」を紹介しつつ、なぜそれがウーズル効果に陥りやすいかを示すことで、チームに批判的思考を浸透させる。
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意思決定会議:役員に示すデータが「どの出典に基づいているか」を透明にすることで、表面的な権威づけを避ける。