人はポジティブな情報よりネガティブな情報に注目し、優先的に信じたり、強く記憶に残したりする傾向がある。これらの傾向をネガティブ・バイアスと呼ぶ。ネガティブ・バイアスは、生物が進化の過程で身に着けたと言われている。
狩猟時代の命の危険をもたらすネガティブな体験や感情を強く記憶しておくことで、その後に起こりうる危険を察知し迅速に回避することで身を守ってきた。ネガティブ・バイアスは、命の危険から生き残るため存在する。
現代社会でのネガティブ・バイアス
狩猟時代とは一変し、比較的安全な生活環境を手に入れた現在でも、ネガティブな感情はDNAに刻まれ、優先するメカニズムは働き続けている。
社会学者のAlison Ledgerwoodが行った実験では、「人は本質的には同じ事柄であるにも関わらず、ネガティブな印象からなかなか離れられず、意見を変更したがらない」ことが証明されている。
実験:新しい方法の外科手術
被験者を二つのグループに分けて、グループ1には「手術の成功する確率は70%である」と伝え、グループ2には「手術が失敗する確率は30%である」と伝えた。
実験の結果、グループ1は手術に対して好意的な意見を持ち、グループ2は否定的な意見を持った。
後に、グループ1に「30%の確率で失敗する手術だ」と伝えたところ、手術を好意的に受け入れることができなくなった。一方でグループ2に「70%の確率で成功する手術だ」と伝えても否定的な意見は変わらなかった。
サービスに対する不信感を持たせないために
一度不信感を抱かせた相手への印象を覆すには、かなりの努力を要する。
「サイトでよくわからない会員登録を請求されたので見るのをやめた」「アプリの規約がいつのまにか変更されていて、個人情報を外部に譲渡するような内容に変更されていたからアンインストールした」など、ユーザーが不安な気持ちになった結果、サービスに対する不信感を抱き、離脱する原因となってしまう。
「A社のサービスは良くなかったから、A社の他のサービスもダメだろう」と、該当サービス以外にもネガティブな印象を持たれたり評価の低い口コミが広まったりする恐れもある。常に誠実にユーザーと向き合い、時には充分な説明を行って、不信感を抱かせない設計を行うべきである。