知識や経験から一番良い決定をするために必要な気力のことで、1日の使用量には限りがある。残量が少なくなると、人は感情や欲求などの本能を優先させてしまう。
例えば、資料と照らし合わせながら新しいプロジェクトの計画を立てるなどの複雑な作業は、判断や決定が難しくなるため認知資源の消費量も多くなる。ブドウ糖(グルコース)を摂取すると一時的に認知資源の量を補えるが、完全に回復させるためには睡眠が必要となる。
認知資源の消費量が多い5つのタスク
以下に、消費量が比較的多いタスクを5つ紹介する。初めて行う作業やマルチタスクは複雑なため消費量が多くイメージできるが、判断や決定、選択と言ったちょっとした作業でも、1日のうちに数が多くなれば、消費量も多くなる。例えば、着用する洋服を選ぶという行為だけでも認知資源は減ってしまうのだ。
- 判断、決定
- 注意
- 選択
- 複合作業(マルチタスク)
- 初めて取り組む作業
難しい数列を覚えた後には自制できない
欲求に抵抗するには認知資源が必要であることを証明するために、Baba Shiv教授とAlex Fedorikhin氏が、1999年にハーバード大学の卒業生165人を対象に数列を暗記した後にチョコレートケーキとフルーツサラダを提供して食べたい方を選んでもらうという実験を行った。
2つのグループに分け、Aグループは2桁の数列、Bグループは7桁の数列を暗記させた。
2桁の暗記をしたAグループの参加者の多くはヘルシーなフルーツサラダを選んだのに対し、7桁の暗記をしたBグループの参加者の半分はチョコレートケーキを選んだ。7桁の数列の暗記という難しいタスクを正確にこなすために認知資源を使ってしまったので、砂糖がたっぷり使われた甘いチョコレートケーキを食べるという欲求に流された行動をした。

難しい数列に認知資源を使ってしまうと欲求に流されやすくなる
スティーブ・ジョブズやマーク・ザッガーバーグは認知資源の浪費を防ぐ生活をしている
ビジネスの指針や大きな決定をすることが多い成功者は、大事な決断の時に欲求や感情で選択しないようにその日に着る洋服や朝食に食べるメニューなど日々の些細な選択は避ける傾向がある。
Appleの元CEOSteve Jobs氏やMark Zuckerberg氏が一貫して同じ服装をしていることで有名で、これは認知資源を節約するためだとされる。
マルチタスクは認知資源を大量消費する
「モバイルを見ながら友人と話す」、「食事中にネットサーフィンする」など日常の中で行う複合作業(マルチタスク)が爆発的に増えている。だが、マルチタスクをこなすにはたくさんの認知資源が必要になるのでユーザーが定期的に使用するサービスはユーザーが迷わず使用できて、負担に感じないように設計することを心掛けることが大切だ。
例えば、スマートフォンを目覚ましとして使用する場合、2つの入力方法がある。1つは設定画面から起床時間を指定する方法で、もう1つは音声入力システムを使って声で指示する方法だ。人の目を気にしない場所で起床時間を設定するなら、音声入力のほうが簡単だ。
定期的に購入する商品がある場合、Amazonの定期購入に切り替えるだけで認知資源は節約できる。一定の期間を開けて自宅に消耗品が届くので、サイト上から自分で何度も同じものを注文したり、買い物リストをつくって店に探しにいく必要がない。ユーザーがサービスを使う用途を把握してユーザーが抱える課題やひと手間を解決することがビジネスの成長に繋がる。
関連用語
- 記憶の2重貯蔵モデル
- システム1、システム2
- フリクション
- 決定疲労
- 自我消耗