周囲の人々の方が自分より知識や経験があると思い、周囲の判断が正しいと思い込む心理傾向である。適切な判断ができない曖昧な状況において顕著に見受けられる。「同調」の一種である。
心理学とマーケティングの教授であるRobert Cialdiniが1984年に出した著書「影響力の武器」の中で提唱した。
周囲の意見を参考にして選択する
ECサイトを利用するとき、たくさんある商品の中からどれを選べば良いのか悩む場合がある。購入したユーザーから高い評価をもらっている商品がわかれば、選ぶときの不安がなくなる。
Amazonは類似商品の中でユーザーからの評価が高いものをレコメンドしているため、ユーザーは迷わずに商品を購入できる。
社会的証明が及ぼす悪影響
他者の意見や行動に合わせることで選択に困らずに済むが、周囲の行動が必ず正しいとは限らない。
ジェノヴィーズ事件
1964年にニューヨークでジェノヴィーズ夫人が殺害された。殺害当時、30人以上の人が彼女の叫び声を聞いていたが、誰も助けや警察を呼ぶ行動を取らなかった。
叫び声が聞こえても、周囲の人たちが動揺していなかったため、叫び声を聞いた人たち全員が「誰かが警察に通報しただろう」と思って助けを呼ばなかった。
他にも、お店が用意した客に並んでもらって繁盛店に仕立て上げるサクラ行為や、自殺報道を見て自殺願望者が自殺してしまうケースなど、社会的証明が悪い影響を与えるケースが存在する。
マーケティングで使われる社会的証明
消費者に企業や製品をPRする際に、自身でPRするよりも他者にPRしてもらうことで売上の向上やブランディングの形成に繋がるケースがある。
サービスを取り扱うサイトでは、導入企業を複数掲載することにより、ユーザーは「多数の企業で使われている良いサービス」と捉える。
書籍でも社会的証明は活用されている。書籍の帯に「よく読んでいる人」や「有名人からの推薦文」が書かれていると、読み手は価値がある本だと思いやすくなる。
関連用語
参考リンク
参考文献
- Cialdini PhD, Robert B「 Influence (Collins Business Essentials) 」HarperCollins 2014