物や人の悪い特徴が原因で、因果関係がないことにも否定的な評価をしてしまう認知バイアスのこと。
例えば、盛り付けの汚い料理を見た時に「美味しくなさそう」と思ってしまうのは、見た目が悪いせいで本来見た目とは関係のない味についても否定的に評価してしまうホーン効果の影響である。
ホーン効果によって否定的な評価をした後は、悪い特徴が目につきやすくなり、良い特徴があったとしても懐疑的に見られたり無視されたりする。
ホーン効果と逆のハロー効果
ホーン効果は、「悪魔の角効果」「逆ハロー効果」とも呼ばれることがある。
ちなみに、ハロー効果は、物や人の良い特徴が原因で、因果関係がない項目に関しても肯定的な評価をしてしまう現象である。例えば、「この人は学歴が高い」と聞いただけで「仕事ができそう」と思い込んでしまうことが挙げられる。
ホーン効果とハロー効果の例として、第一印象で犯罪者への評価が変わるケースを紹介する。犯罪を犯した人について、怖そうに見える人に対しては「やると思っていた」と思いやすくなり、穏やかそうに見える人に対しては「そんなことをする風には見えなかった、何か事情があるのでは」と思いやすくなる。
ホーン効果とハロー効果は、1920年にアメリカの心理学者・教育学者であるEdward Thorndikeによって提唱された。
なぜホーン効果が起きるのか
ホーン効果が起きる原因には、人間の脳の思考モードが関連している。
脳には2つの思考モードがあり、そのうち直感的な早い思考の「システム1」がホーン効果に影響している。
システム1は、物事を判断する時に自動的に働くデフォルトの思考モードであり、考えなくても素早く結論を出すことができる。ただし正確性に欠け、バイアスがかかりやすい。
物や人を見た時にはシステム1が働き、外見や第一印象をもとにした直感的な判断を行う。その結果、ホーン効果やハロー効果のような認知バイアスが起きる。
よくあるホーン効果の例
ユーザーがサービスに悪い印象を持ってしまった場合、実際には因果関係のない部分も否定的に見られる可能性がある。
営業担当者の態度が悪かったので、ツール導入を見送った
ツールの導入提案を受けた時に、営業担当者の話し方や態度が原因で導入を見送ることがある。営業担当者や説明資料のような最初の接点の印象が悪いと、製品に対しても否定的な評価がされやすくなってしまう。
ウェブサイトが広告だらけで離脱した
ウェブサイトを訪問した際に、広告バナーが多すぎて「使い勝手が悪そう」と離脱されてしまうことがある。実際には使いやすいシステムを備えていたとしても、広告の多さが悪印象に繋がり、ウェブサイト全体に悪いイメージを持たれてしまうのである。
「醜い見た目であれば扱いづらく、美しい見た目であれば使いやすいものだろう」と思い込みやすい心理現象である美的ユーザビリティ効果も働いている。
タレントが不祥事を起こし、コマーシャルを降板させられた
タレントの好感度と商品の質には因果関係がない。しかし、ホーン効果によって商品自体の評価が下がることをスポンサーが恐れた結果、タレントがコマーシャルの降板を余儀なくされるケースがある。
国同士の関係が悪化し、不買運動が起きた
自国と他国の関係が悪化したことから、相手国で作られた製品の不買運動が起こることがある。
関係が悪化した原因が解消されても、その後も不買運動が継続される場合もある。原因が取り除かれても悪い印象が残り続けてしまうのはホーン効果の影響による。