心理学・社会調査において頻繁に見られるバイアスの一種であり、「測定されること自体が結果に影響を与える」という逆説的な構造をもつ。
たとえば、ユーザーが自分の操作が記録・監視されていると感じた場合、普段とは異なる行動をとることがある。このような影響を無視してデータを解釈すると、現実と異なる設計判断につながる危険性がある。
提唱者
この概念に明確な「提唱者」は存在しないが、類似概念として社会心理学におけるホーソン効果(Hawthorne Effect)が有名である。
これは1920年代にウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場で行われた生産性研究に由来し、被験者が「観察されている」と感じたことで能率が向上したことが報告された。
ホーソン効果は計測効果の代表的な事例として広く認識されている。
デザイン上に関わる利用方法
計測効果は、ユーザーリサーチや実験的評価、ABテストなど、データに基づく設計改善において注意すべき要素である。観察やログ取得によって行動が変化する可能性を常に考慮し、測定方法や状況設定を工夫する必要がある。
活用方法:
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ユーザビリティテストでは、テスト中であることを意識しすぎたユーザーの“よそゆき行動”を分析対象としないよう、設問や進行を慎重に設計する。
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アプリのログ分析では、初回ログイン時や通知直後の異常な挙動を、計測効果として切り分けて解釈する。
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行動変容デザインにおいては、あえて「記録されている感覚」を活用し、良い行動を促す設計(例:万歩計の表示)に応用することもある。
活用シーンと事例
シーン | 活用事例 | 内容 |
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ユーザビリティテスト | ユーザーが「うまく使わなければ」と緊張してしまい、本来の行動がとれなくなる | リラックスできる環境、事前のアイスブレイクで緩和 |
モバイルアプリのABテスト | テスト対象であると伝えるとクリック率が上がってしまう | ダミーグループを用意し、非通知群との比較で効果を測定 |
健康系アプリ | 「記録される」という意識が継続利用の動機になる | 歩数や体重の可視化が日常行動の変容を促す |
関連バイアスとの違い
用語 | 意味 | 計測効果との違い |
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観察者効果 | 観察されているという意識による行動変化 | 計測効果とほぼ同義、観察者の存在が影響要因 |
社会的望ましさバイアス | より“よく見せよう”とする回答傾向 | 意図的・意識的な自己修正が含まれる |
回答バイアス | 調査手法や質問順序によって回答が歪む | 計測効果は行動レベルの変化が中心 |
関連用語
関連書籍
- 「認知バイアス事典」