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ホーソン効果 The Hawthorne effect

人から注目を浴び、期待に答えようと行動することで好結果を引き起こす現象

1927年から1932年に労働者の生産性の向上を目的に行われた実験から見つかった現象。イリノイ州シセロにあるホーソン工場で実施されたことから、ホーソン効果と呼ばれる。

ホーソン工場での実験

この実験に関与したハーバード大学ビジネススクールのElton Mayoエルトン メイヨ教授は、どのくらいの明るさが作業員の生産性を上げるのに適しているかを調べたが、どんな光量でも生産性は向上したことが分かった。

ただし、向上した原因は、横にいた調査員の存在が、作業員を真剣に仕事に取り組ませたからであると判明した。作業員は注目を浴びることで、相手の期待に答えようとし、結果的に生産性が向上したのである。これがホーソン効果である。

この実験では、薄暗くて手元が見づらい環境でも作業能率が変わらず生産性が向上した。また、作業員に対して休憩時間や給与といった労働条件を悪条件に変えた場合も、同じように生産性が向上した。

異なる光量でも生産性は上がるイメージ図

どんな光量の元でも、作業員の生産性は上がった

他にも、「監督者と作業員の関係が良好であれば、そうでない場合よりも生産性が向上する」ということもこの実験で明らかになった。

活用事例

ホーソン効果をうまく利用している事例としてディズニーの「スピリット・オブ・東京ディズニーリゾート」と「ファイブスタープログラム」という制度が挙げられる。

「スピリット・オブ・東京ディズニーリゾート」
キャストはお互いの働きぶりを称え合うため、配られたカードに自分が素晴らしいと思うキャストの名前を書く。書かれたメッセージの内容や、カードの枚数により「スプリットアワード」が開催される。

「ファイブスタープログラム」
素晴らしい活動をしたと認められたキャストには「ファイブスター・カード」がマネジメント側から渡される。これをもらうと、特別なパーティーに参加することができる。

この2つの制度は、キャストが「他者から見られる」という点で共通しており、ホーソン効果をうまく活用し、キャスト同士や上司との関係性を高め、生産性の向上に繋げている。

(参考:「キャスト褒賞」東京ディズニーリゾートHPより

ピグマリオン効果(期待効果)との違い

ピグマリオン効果は「教師の期待によって学習者の成績が向上する効果」のことである。これもホーソン効果と似たように思えるが、大きな違いはその対象にある。ピグマリオン効果は、「他者に期待することで、相手の成果が上がる」ことを意味するが、ホーソン効果は「他者から注目を浴びることで、自分の成果が上がる」のである。

つまり、成果を相手が出すか、自分が出すかの対象に大きな違いがある。

効果 定義 成果を出す対象
ピグマリオン効果 (他者に期待することで)、学習者の成績が向上する効果 相手
ホーソン効果 (他者から期待されることで)、作業員の成果が向上する効果 自分

定性調査におけるホーソン効果

定性調査を行う際、ホーソン効果は注意すべき対象のひとつである。なぜなら、観測者の存在自体が、被験者に影響を与えることがあるためだ。

インタビューの前に知っておかなければならないことは、インタビューイーは、自分の賢さを見せたい(バカだとは思われたくない)と思っていることです。
インタビューリサーチ:UX TIMES

他にもブログ「Online testing: The ultimate customer research」で、WiderFunnel社のクリス・ゴワード氏がユーザビリティテストに関して述べた内容が参考になる。

「観察する行為は、物事を変化させます。人はもし自分が観察されていると知った時、アクションを完了することにより積極的になるでしょう。例えば、ユーザービリティテストのあるシーンで、ユーザビリティの問題を調べている際、被験者はその問題が重要かどうかに関係なく、問題を発見しようとより積極的になるでしょう。」

このように、定性調査を行う際は、観測者の存在 / 行為が被験者に影響を与えてないか、ホーソン効果がもたらす1つのバイアスに注意する必要がある。

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