教育心理学における心理的行動の1つで、教師の期待によって学習者の成績が向上することである。 別名、ローゼンタール効果、ピグマリオン効果。これらの別名は内容は同じだが、その由来が異なる。
期待効果の別名
ローゼンタール効果
ローゼンタールと研究者らが行った実験から期待効果の検証ができたことから由来。
ピグマリオン効果
ギリシャ神話から由来。
ギリシャのキプロス島に、ピグマリオンという名前の彫刻の上手な王様がいた。ある日、自分自身が象牙に刻んだ理想的な女性の彫刻像に、恋をしてしまった。この彫刻像を、生きた女性に変え、妻にしたいと熱烈に祈っているうちに、愛と美の女神アフロディーテがこの願いを聞き入れて、その彫刻に生命を与え人間にしたという逸話。
人間は期待された通りの成果を出す傾向がある
ローゼンタールと研究者らが、あるクラスに対して知能検査を実施した。ローゼンタールによると、実験の概要は、次のとおりである。(*1)
- 小学校のクラスで、普通の知能テストを行う
- 担任教師には、数ヶ月後に成績が伸びる生徒を見つけるテストだと説明する
- テスト結果とは無関係に選んだ生徒の氏名を載せた名簿を担任教師に渡し、「この名簿の生徒たちは成績が伸びる潜在能力を持っている」と説明する
- 数か月後に生徒の成績を確認する
検査者が担任教師に「成績が伸びる」と説明した生徒は、他の生徒に比べて実際に成績が伸びた。
つまり,潜在能力の高い低いに関係なく、教師が「成績が伸びる」と期待して、励ましの言葉をかけた生徒の成績がよく伸びたのである。
相反するゴーレム効果
期待効果はゴーレム効果と一緒にあげられることが多い。ゴーレム効果とは、他者から期待されないことによって成績が低下する現象である。(*2)
両方とも他者の期待が成果に対してどのように影響するかを説明するものであり、期待効果は他者から期待されることが成果の向上に影響することを説明し、ゴーレム効果は他者から期待されないことが成果の低下に影響することを説明したものである。
期待効果への批判と補完
期待効果は教師から生徒への期待だけに焦点を当てており、生徒からの視点が欠けているという批判がある。成績が上がることは教師の期待があっただけではなく、期待へ応じようと生徒自ら努力することがあってこそ良い結果が出せたということである。
教師が生徒へ期待を持って励ましたとしても、生徒がその期待をプレッシャーとして受け取るのであれば、良い結果は出せなかったであろう。
期待効果の足りない部分を補足するのに有効なのが、ホーソン効果である。ホーソン効果とは、他者から期待されていると感じることで、自ら行動の変化を起こし、良い結果を得ることである。(*3)
①:期待効果ー期待することで成果が向上すること
②:ホーソン効果ー期待に応じようとすることで成果が向上すること
期待効果を導入する際は、期待効果とホーソン効果の二つの観点をバランスよく取り入れる必要がある。
参考記事、文献
- (*1)Rosenthal, R. & Jacobson, L.:”Pygmalion in the classroom”,Holt, Rinehart & Winston 1968
- (*2)ゴーレム効果
- (*3)ホーソン効果
- 図:期待効果とホーソン効果の関連性(引用元:Designed by iconicbestiary / Freepik)