回答者が社会的に望ましいとされる回答を選んだり、質問文の影響を受けて特定の方向に回答を歪めたりすることで発生する。
信頼性のある調査結果やユーザーインサイトを得るうえで、重大な影響を及ぼすバイアスである。
提唱者

ポール・ラザースフェルド https://en.wikipedia.org/wiki/Paul_Lazarsfeld

スタンリー・G・ペイン https://www.elespanol.com/cultura/historia/20190320/stanley-payne-no-golpe/384462840_0.html
「回答バイアス」という用語自体は特定の一人の提唱者に帰属するものではなく、心理学や社会調査、統計学などの分野において広く議論されてきた概念である。
ただし、ポール・ラザースフェルド(Paul Lazarsfeld) やスタンリー・ペイン (Stanley Payne) など、調査方法論の発展に寄与した研究者が回答バイアスの構造的問題を研究対象として扱ってきた。
デザインにおける活用方法と事例
UXリサーチやユーザビリティ調査の設計において、回答バイアスを回避・軽減するためには、以下のような工夫が有効である:
- 中立的な表現を使った質問設計
- 「はい/いいえ」だけでなく自由回答や選択肢のランダマイズを導入
- 匿名性の担保によって社会的望ましさバイアス(social desirability bias)を抑制
- プレテストによる設問のバイアス検証
【具体例】
たとえば、ある銀行アプリの使い心地に関する調査で、「このアプリのデザインは優れていると思いますか?」という質問をした場合、多くの回答者は“優れていない”と思っていても、「否定的な回答は評価に影響しそう」と考え、「はい」と答えてしまう可能性がある。
これは、社会的望ましさバイアスによるものである。
このようなケースでは、「最近このアプリで困ったことがあったか?」など、間接的な聞き方に変更することで、実態に近い情報を引き出すことが可能になる。
プロダクト・コンテンツデザインでの適用
【活用シーン】
- ユーザーインタビューの設計
- フィードバックフォームの改善
- ABテスト結果の分析補正
- パーソナライズ調整における自己申告データの取扱い
【具体的な活用例】
定性調査でのインタビューにおいて、「この機能、便利ですよね?」というような誘導的な質問を避け、「この機能を使った時、どんな印象を持ちましたか?」といったニュートラルな問いを用いることにより、バイアスの少ない意見を収集できる。
関連用語
- ポライトネス理論
- 社会的望ましさバイアス:評価されたいという動機から、好ましい回答をしてしまう傾向
- 同調バイアス:他者と同じ意見を述べることで安心を得ようとする傾向
- 極端回避バイアス:中間的な選択肢を好み、極端な選択肢を避ける傾向
- 記憶バイアス:実際よりも印象に残った事象を重視して回答してしまう傾向
- アクイエッセンスバイアス:「はい」と答えるほうが楽と感じ、無意識に肯定的回答を選ぶ傾向