ある対象や概念を一段階高い視点から俯瞰・分析・記述することを表す。
他にも、「超~」「高次~」「~の間の」「~の後ろの」「~を含む」「背景にある」などの意味も持つ。
提唱者と背景
「メタ:meta-」という接頭辞は古代ギリシャ語の「μετά(meta)」に由来し、「後に」「越えて」「高次に」といった意味を持つ。
哲学的な用法では、アリストテレスが自然学(フィジカ)の次に記した著作が「メタフィジカ(形而上学)」と呼ばれたことから、「物事の本質を捉える高次の思考や理論」を指す語として定着した。

ジョン・H・フラベル 引用:https://www.amacad.org/person/john-hurley-flavell
その後、20世紀に入り、認知心理学や情報科学の発展とともに「メタ」の概念は応用範囲を広げた。
特定の提唱者は存在しないが、ジョン・H・フラベル(John H. Flavell)は1970年代に「メタ認知」の理論化に貢献した代表的研究者である。
その他のメタ用語
メタは接頭語なので、何らかの概念について、その概念自体を対象とする同種の概念、「○○についての○○」を「メタな○○」「メタ○○」と言い、ある対象や概念を一段階高い視点から俯瞰・分析・記述することを表すことができる。
たとえば、「メタ認知」は“認知についての認知”、“メタデータ”は“データに関するデータ”である。
哲学、心理学、情報科学、メディア論では、”メタ思考”とされ、幅広い分野で用いられ、文脈に応じて意味が変化する柔軟な概念である。
現代では「メタフィクション」を筆頭に「メタ知識」や「メタ記憶」など、多くの「メタ〇〇」という言葉が存在する。
デザイン上に関わる利用方法と具体的事例
▶ 活用方法①:自己参照型設計
UIやナビゲーション設計において、システムの仕組みそのものをユーザーに提示することで、利用者の理解と行動予測を助ける設計思想に活かせる。
例:ソフトウェアの「ヘルプ」や「ツールチップ」に「この機能は何をするのか」を明示することは、ユーザーの“使用についての理解”(メタ使用)を促すものである。
▶ 活用方法②:メタ視点でのユーザーインタビュー分析
UXリサーチでは、「ユーザーが語っていること」そのものではなく、「その語り方」「前提にしている考え方」などをメタレベルで捉えることが有効である。
例:ユーザーが「このアプリは難しい」と言った背景に「直感的であるべき」という無意識の期待があることを読み解く。
▶ 活用方法③:コンテンツの再構築と共創
ナレッジマネジメントやワークショップ設計では、「この資料は何のためにあるのか」「今やっている議論の構造は何か」といったメタ的問いかけを用いることで、対話や協働が深化する。
プロダクト例
シーン:ユーザー学習支援アプリ
実例:プログラミング学習サービスでは、学習者が「なぜこのコードを書くのか」を解説し、学習行為そのものに対する理解(メタ学習)を促す構成がなされている。これにより、表面的な模倣ではなく、構造理解を伴う習得が可能となる。
関連用語
参考文献・出典
- Flavell, J. H. (1979). Metacognition and cognitive monitoring. American Psychologist
- Gregory Bateson (1972). Steps to an Ecology of Mind
- Alexander, C. (1979). The Timeless Way of Building