ユーザーの行動変容を促すための多様な仕組みが意図的に組み込まれ、テクノロジーが説得の手段として活用される。つまり、コンピュータ、アプリケーション、ウェブサービスなどのデジタル技術が、人間の思考や行動にどのような影響を与えるか、そしてそれをいかに設計するかを扱う分野である。
たとえば、「通知によってユーザーにアプリの再利用を促す」「ゲーム内の報酬設計によって継続的な利用を誘導する」といったように、ユーザーの行動を導く仕掛けが活用される。
プロダクトやサービスのデザインにおいては、ユーザーの心理的特性と行動変容のメカニズムを深く理解し、適切なトリガーや報酬設計を行うことにより、利用の継続性や成果の最大化を図ることができる。カプトロジは、そうした設計思想の中核を成すものである。
用語の名称はComputers As Persuasive Technologiesの頭文字に‑ologyを付けた造語である。
提唱者

ビージェイ・フォッグ(引用)https://behaviordesign.stanford.edu/people/bj-fogg
1996年にB. J. Fogg(ビージェイ・フォッグ)により提唱された。
ビージェイ・フォッグはスタンフォード大学Behavior Design Lab(旧Persuasive Technology Lab)創設者であり、「習慣超大全:Tiny Habits」や「フォッグ式消費者行動モデル:Fogg Behavior Model」で知られる行動科学者である。
デザインへの活用法と事例
応用領域 | 活用方法 | 具体例 |
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① 健康促進アプリ設計 | 食事や運動の習慣付けにおいて、段階的なトリガー・報酬を設置する。 | スマホで「水を飲む」習慣を作るために、通知+達成記録+称賛メッセージでユーザー行動を誘導する。 |
② UX/UIデザイン改善 | ボタン/バナーなどへのマイクロインタラクションを設計し、クリックや操作を誘導する。 | メール配信フォームで「メールを登録」クリック後に確認メッセージ+次のアクション案内を出す。 |
③ サステナビリティ施策 | リマインダーと社会的証明により行動変容を促す。ユーザーに「他の90%の人が使用している」表示を掲載。 | 電気使用量が多い時に「今なら◯%OFF節電中です」と通知を送信。 |
「この場面で使えるかな?」具体シーン
場面:Eラーニングサービスの継続支援
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問題認識:「学習を続けるモチベーションが続かない」と離脱率が高い。
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captology適用例:
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毎朝学習時間に プッシュ通知(トリガー)を送る
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学習完了時に バッジ付与(報酬)し、進捗を一覧で見える化
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SNSで友人と 成果を共有し、社会的証明を活かす
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→ ユーザーを自然に「学習行動」にリードし、離脱を減らし継続率を向上させる。
設計で押さえるべきポイント
- 動機(Motivation)+能力(Ability)+トリガー(Trigger)の3要素を設計で満たすべし(Fogg Behavior Model)
- 倫理性の担保:ユーザーの意志を尊重し、操作的になりすぎないよう配慮が必要である。
- 効果測定と改善:ABテストや行動ログを用いて、「意図した行動が増えているか」を定量評価し継続的に最適化する。
カプトロジは、テクノロジーを通じて人々の行動をより良い方向へ導くための設計思想である。
プロダクトやサービスデザインにおいては、ユーザーの心理構造と行動変容メカニズムを深く理解し、適切なトリガーや報酬を組み込むことで、継続性や成果を高めることが可能となる思想的支柱である。
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