人が「ある対象が典型的なプロトタイプ(代表的な例)」とどれだけ似ているかによって、確率や所属カテゴリを判断してしまう認知的近道である。
実際には母集団のベースレート(起こりやすさ)などを無視した誤った推論につながりやすい。
提唱者と背景
1970年代に**アモス・トベルスキー(Amos Tversky)とダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)**によって提唱された。彼らは「ヒューリスティックとバイアス」研究の中で、人間がプロトタイプによって判断しやすい傾向を明らかにした(britannica.com)。
デザインにおける利用方法と具体事例
1. ユーザー調査とペルソナ設計
問題:代表的なユーザー像(プロトタイプ)に引っ張られ、少数派やマイノリティのニーズを見落とす傾向がある。
対応策:母集団のベースレートを意識し、量的データに基づいたペルソナ設計とする。ユーザーインタビューは典型以外の声も取り入れ、多様性を担保する。
2. UI設計・アイコン選定
問題:「フォルダ」アイコン=リアルな書類フォルダの形に似せる代表性重視で、逆に古臭さや混乱を招くことがある。
対応策:実際のユーザー行動や文脈に合わせて、最適な象徴(メタファー)を選択し、操作性と直感性を両立させる。
3. エラーメッセージとUX
問題:「エラー=赤いバツアイコン+厳しい言葉」という典型イメージに引きずられすぎて、ユーザーに不安を煽ることがある。
対応策:エラーの内容や状況に応じたメッセージとトーンを選び、アラートではなく建設的なサポート的表現を心がける。
「この場面に使えるかな?」シーンと具体的事例
シーン:Webアプリのログイン画面におけるアイコン設計
- 良くある誤り:「ユーザー=人の顔アイコン」が典型として使われやすいが、B2B向け管理画面では役割や名前表示の方が識別性が高いこともある。
- 改善事例:「担当者○○さん」がいくつか並ぶ場面では、顔ではなく「イニシャル+役割を明示」したアバターを採用し視認性を高めた。
デザイン観点での注意点
原則 | 注意点 |
---|---|
代表性に頼りすぎない | プロトタイプだけで判断すると多様なユーザー要件を見落とす |
ベースレートを考慮 | 典型から外れるケースも一定割合で存在する点をデザインに反映 |
思い込みによる設計 | ステレオタイプから生まれる誤った前提で仕様設計しないよう注意する |
代表性バイアスを意識することで、実際に存在するデータに基づいたデザインを行い、ステレオタイプに引きずられない、より公平で精度の高い判断と設計が可能となる。
代表性バイアスと代表性ヒューリスティックの違い
- 「バイアス」はその近道がうまくいかず、偏って誤ってしまった状態
- 「ヒューリスティック」は速く判断するための思考の近道(ルール)
代表性ヒューリスティック(判断法)
↓(過信・誤用)
代表性バイアス(偏り・判断ミス)