UXを学ぶ上で、「ヒューリスティック」と「バイアス」について知ることは必要不可欠ですが、皆さんは違いについて理解していますか?
UX DAYS TOKYOスタッフ間でもその違いが明確になっていなかったので、この2つの用語について理解を深めるため、それぞれの特徴や違いについてのディスカッションを行いました。
ディスカッション参加者(職種)
イケダ (デザイナー) |
ナカイ (フリーランス) |
コソバ (デザイナー) |
タカダ (マーケター) |
フジワラ (人事) |
ヤマダ (エンジニア) |
モデレーター
大本 (オーガーナイザー) |
ディスカッション前のヒューリスティックとバイアスの認識
ヒューリスティックとバイアスの違いについて、各自の意見を伝えあいました。
ヒューリスティックはヒューリスティック調査などで使われているイメージがある。バイアスはユーザーの思い込み。
心理学のヒューリスティックは答えを出すことができる脳の思考パターン。意思決定の過程でバイアスが起きる。
ヒューリスティックは経験によるもの。バイアスは意思決定において邪魔になるもの
ヒューリスティックとは経験則。ヒューリスティック調査は経験則による調査。心理学用語のヒューリスティックは経験則に基づく意思決定。バイアスは意思決定の過程で生じた判断の偏り。
意識的に寄せに行くのばヒューリスティック。無意識で寄るのがバイアス。
バイアスはヒューリスティックと同義語になりえる
見ているもの、言葉、人が受け取るものには全てバイアスがかかっている。
経験からのバイアスがヒューリスティックと捉えても良い。バイアスとヒューリスティックを同義語で使っている場合もある。どちらにしても、バイアスを除くために客観的な思考が必要となる。
ヒューリスティックにまつわるUX・心理学用語
ヒューリスティック評価
ユーザビリティの専門家が経験則に基づいてUIの評価を行い、問題を発見し改善案を提案する分析手法。
分析評価はバイアスがかかっている可能性があるが、経験から良い答えを出すことが可能。
代表性ヒューリスティック
人々がすでに抱いてる代表的、典型的イメージを判断や意思決定に利用してしまうこと。
例:野球をしていて体格がいい人=キャッチャーなのではないか?
利用可能性ヒューリスティック
思い出しやすい事例を優先させて判断や意思決定に利用し、判断を下してしまうこと。
例:震災が起きるとまた前回と同じようなことが起きるのではないか?
感情ヒューリスティック
好きか嫌いか、もしくは感情反応が強いか弱いかによって判断を下してしまうこと。
例:ブランコで楽しく遊んだ記憶がある人と、ブランコで怪我をしたことのある人ではブランコに対する判断が異なったものになる。
どの分野でも「ヒューリスティック」の意味は変わらない
ヒューリスティック評価と心理学のヒューリスティックは用法が違うのでは。マーケティングで使うヒューリスティック評価をバイアスと関係があると考えてしまわないよう注意すべき。
業界に関係なく同じ意味ではないか?ヒューリスティック評価のチェックリストがあったとしても、経験則をチェックするものなので意味合いとしては近い。
書籍ファスト&スローの著者が伝えたかったこととは?
人間は捉え方や思考パターンに癖があるというのを理解して欲しかったのでは。自分がバイアスにかかっている時に気づいて欲しいという思いも含まれている。
意思決定の際にバイアスなどがかかってしまうので、どう自分ので処理をして意思決定するのか?ということ。
人間は合理的にものを考えないで意思決定をしている。人間はこういう風に物事を考えていて偏っているよというのを伝えたかった。
システム1は必ずしも悪いことではない。経験で鍛えられる部分なので素早い判断ができるようになる。バイアスはかかっているものだから「かかっているがどうしよう?」と考える。
意思決定する際にバイアスがかかってしまうことがありますが、バイアスにかからないようにというよりは、視点を持って自分の中で処理していくか?ということを伝えようとしているのではという意見でまとまりました。
ヒューリスティックとは経験則である
今回のディスカッションでまとまったのは、ヒューリスティックは経験則なので偏り・バイアスではあるということです。
しかしながら、その経験が知見であり価値がある事を理解しました。
以前はバイアスとヒューリスティックについて文献を読んで調べても明確な違いがわからないままでしたが、今回のディスカッションで理解することができました。
参加者が持つバイアスとヒューリスティックに対しての考えをディスカッションし、ヒューリスティックにまつわる用語についてもしっかり話せたのでとても有意義な時間でした。
ひとりで調べただけでは理解できなかった部分が学べ、バイアス=悪ではないか?という思い込みを打破することができました。
経験と視点を育てる
UXは、明確なマニュアルや正解がなく数字で簡単に測れない部分ですが、一定のルールがあるので、良い視点と思考の元、たくさんの経験を積む必要があります。
「ヒューリスティック評価は経験則から評価する分析方法」と単純に考えてしまうのではなく、経験則という偏りが知見であり差がでる重要な要素と言えます。だからこそ同じUXerでも経験によって結果に差が出てきます。
インタビューひとつとっても人によって変わってくるのはそのためです。もちろん、バイアスではあるので鵜呑みにはできないですが、大切な知見でもあることは認識しておきましょう。
今回のディスカッションの内容の一部はUX DAYS TOKYO公式チャンネル『You x Tubo(ゆーえっくす・つぼ )』で公開しております。是非お聞きください。