脳科学、遺伝学、行動科学の知見を統合しており、個人を「思考特性」と「行動特性」の2つの次元で捉える点が特徴である。
思考特性(Thinking Attributes):分析型、ディテール型、社交型、コンセプト型の4分類
- 分析型ユーザー
→ データや論理を重視し、理性的に物事を考える。ミーティング前に資料を読み込み、根拠をもって話すのが好き。 - ディテール型ユーザー
→ルールや秩序を大切にし、計画的に物事を進める。具体的な言葉を好み、確実に成果を出すことを目指す。 - 社交型ユーザー
→ 人間関係を重視し、直感や感情を大切にします。周囲の気持ちに敏感で、みんなが楽しく働ける環境づくりが得意。 - コンセプト型ユーザー
→ 新しいアイディアや抽象的な視点を好み、未来を見据えたビジョンを持っています。変化を恐れず、新しい挑戦を楽しむ。
行動特性(Behavioral Attributes):表現性、主張性、柔軟性の3分類
- 自己表現性
感情をどれだけ表に出すかで、強タイプの人は自分のことを喜んで話す、弱タイプの人は人の意見を聞く傾向がある。 - 自己主張性
自分の考えや信念をどの程度強く伝えるかで、強タイプの人は自分の考えや関心ごとを進んで話し、弱タイプの人は人との対立を極力避ける傾向がある。 - 柔軟性
他者の要望にどれだけ対応できるかで、強タイプの人は変化や移行があることを受け入れ、弱タイプの人は自分のやり方に一貫性を持つ傾向がある。
これらの特性はハッキリと分かれるものではなく誰しもが持っている特性である。ただし、人によって特性の度合い・割合が異なる。そして、場合によっては、同じ人物でも異なる特性となることがある。
提唱者
エマジェネティックスはゲイル・ブラウニング博士(Dr. Geil Browning) によって1991年に提唱された。
彼女は教育学者・経営コンサルタントとして活動し、脳科学と心理測定学の知見を組み合わせてこのモデルを開発した。
著書には、「効果的な仕事:ポジティブな組織文化の創出:」がある。
企業・組織
EX(Employee Experience/従業員体験) の領域においては、従業員が自分自身やチームメンバーの特性を理解することで、働きやすさ・心理的安全性・コミュニケーション効率を高める効果が期待できる。
EXにおけるメリット
① チームビルディングの強化
- 各メンバーの強みや認知スタイルを理解することで、相互理解と協力体制が促進される。
- 例:「分析型」の社員にデータ分析を任せ、「社会性型」の社員に顧客折衝を担当させるなど、適材適所が進む。
② 心理的安全性の向上
- 自分の思考特性が認められ、チーム内で共有されることで「自分らしく働ける」という感覚が高まる。
- 意見の違いが「性格の不一致」ではなく「思考の特性の違い」と認識され、衝突が減る。
③ 人材育成とキャリア開発
- 従業員が自分の得意・不得意を客観的に理解できるため、自己成長の方向性を見つけやすい。
- 研修やキャリア面談に活用でき、長期的なエンゲージメントの向上につながる。
④ 採用・オンボーディングの改善
- 新人がチームの思考スタイルの構成を把握することで、早期に自分の役割を理解できる。
- マネージャーはチーム内のバランスを考慮して配置を行える。
具体的なEXデザイン活用例
- 社内研修:エマジェネティックスのプロファイル診断を研修プログラムに組み込み、自己理解からスタート。
- チームダッシュボード:各メンバーのプロファイルを色分けして可視化する社内アプリを導入し、ミーティング前に確認。
- フィードバック文化:上司が部下の「主張性」や「柔軟性」の傾向を把握しておくことで、適切な伝え方を選べる。
- 社内コミュニケーション設計:SlackやTeamsでの通知やタスクの依頼方法を、個々人の認知スタイルに合わせて調整。
EXにおける導入シーン
- 新規事業チームの立ち上げ時に、メンバー構成のバランスを可視化して役割分担を決める
- 離職率が高い部署で、従業員が「居心地の悪さ」を感じている要因を把握する
- グローバルチームで、文化的背景の違いに加えて「思考特性の違い」を整理し、共通言語を作る
プロダクトやコンテンツデザインにおける具体的活用シーン
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ECサイト
分析型には「スペック比較表」、社交型には「口コミやコミュニティ要素」、構造型には「購入ステップの明確化」、コンセプト型には「未来的なライフスタイル提案」をデザインに組み込む。 -
学習アプリ
分析型ユーザーには「進捗データや成績グラフ」、社交型には「仲間との学習シェア機能」、構造型には「明確な学習プラン」、コンセプト型には「学習の意味を広げるストーリー」を設計する。 -
チームコラボレーションツール
UIにおいて、主張性が高いユーザーには「意見表明の場」を、柔軟性が低いユーザーには「一貫した操作設計」を提供することで、利用定着率を高められる。
