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アフォーダンス Affordance

環境が、動物・人間に与えている意味や価値

アメリカの知覚心理学者James Gibsonジェームズ・ギブソンが1979年に提唱した。「与える、提供する」を意味する英単語 affordアフォードに由来する造語。
ギブソンは生態心理学の研究で「知覚を可能にしているものは何か」をテーマとしていた。そこから新しい光についての考え方である生態光学(エコロジカル・オプティックス)を経て、「知覚とは環境と、環境から意味を探す動物の2者で説明できる」という理論の中でアフォーダンスが生み出された。

デザイン領域においては、アメリカの認知科学者Donald Normanドナルド・ノーマンが1988年に「誰のためのデザイン?」という本で広めた。

本来のアフォーダンスの意味とあわせて、アフォーダンスから派生して生まれた概念であるSignifierシグニファイアについても解説する。

肖像 ジェームス・J・ギブソン

ジェームス・J・ギブソン
(画像引用: Wikipedia)

肖像 ドナルド・ノーマン

ドナルド・ノーマン
(画像引用: NNGroup)

ギブソンが提唱した本来の意味

アフォーダンスの土台となる理論である生態光学では、光に情報が満ちていて、動物は光から情報を受け取って知覚しているとしていた。視覚だけではなく、聴覚や触覚などでも情報を知覚できることから、「動物や人間は、環境全体にある情報をピックアップして受け取っていることが知覚である」とギブソンは考えた。

環境が動物や人間のために備えている、良いもの(住居や食べ物)も悪いもの(毒や落とし穴)も含めた意味や価値がアフォーダンスである。

アフォーダンスは、環境のすべてに存在しているが、対象によって現れたり消えたりしているわけではない。アフォーダンスは常に潜在し、発見されることを環境の中で待っている。

橋を例に、アフォーダンスが常に存在することを説明する。

山に架けられた古い橋があり、見た目や少し触ってみた触覚、足を乗せた際の振動などを知覚し、体重が100kgの人間は「渡れない」と判断し、50kgの人間は「渡れる」と判断した。

「渡れる」ことをアフォードした情報も「渡れない」とアフォードした情報も橋そのものに実在する。50kgの人間も、50kgの荷物を背負い合計100kgの重量の状態をしばらく経験すると、橋が100kgの人間に「渡れない」とアフォードした情報を、光や振動から知覚できるようになる。

アフォーダンスは、誰でも利用できる可能性として環境の中に潜在しているが、アフォーダンスの種類によっては知覚するために経験が必要な場合がある。

デザインにおけるアフォーダンス

デザイン領域においては、1988年にアメリカの認知科学者ドナルド・ノーマンが著書「誰のためのデザイン?」で使用したため、アフォーダンスという用語の認知が広まった。

しかし、ノーマンは提唱者のギブソンの意味に加え「物がどのように扱われるべきか、どのような性質を持つものか、またユーザーに直感的にわかりやすいようにデザインされているか」という意味でアフォーダンスという言葉を用いたため、デザイン領域では本来の意味とは異なって利用されるようになった

新たな観点「シグニファイア」

ノーマンはその後の著書で、『「アフォーダンス」という言葉の意味が曖昧になってしまったため、「知覚可能なデザイン上の手がかり」の意味では「シグニファイア(Signifier)」 という言葉を使ったほうがよい』とした。

シグニファイアは、知覚された時に「物がどのように扱われるべきか」「どのような性質を持つものか」の手がかりを示すもので、説明なしでも直感的に使い方が理解できるようなシグナルとして機能する。

今日、シグニファイアを示す場合においても「ユーザーに直感的にわかりやすいようにデザインされているか」といった意味でアフォーダンスという用語が使われている場合がある。

そのためアフォーダンスに言及した文献を読む際には注意が必要である。

アフォーダンスとシグニファイアの事例

アフォーダンスは、環境が備えている価値や意味を示すのに対し、シグニファイアは物の取り扱いが「できそう・できなさそう」といった手がかりを示し、意図的に扱われる。

ドア

ドアは「開けられる」「空間を遮断できる」「姿を隠せる」などの意味・価値のアフォーダンスをもっている。環境との接触経験によって知覚できるアフォーダンスは異なるが、アフォーダンスは誰もが利用できる可能性として環境の中に潜在している。

取っ手が付いていないドアは、どのように開けて良いのかがわからない人もいるが、それはアフォーダンスがないのではなく、シグニファイアがないことが原因である。

例えば、ドアに平らな金属片をつければ、金属片を押せばドアが開くことを示すシグナルとなり、引き手がついていれば、引いて開けることができるシグナルとなる。
ドアのアフォーダンス

フィンガーボウル

フィンガーボウルのアフォーダンス
フィンガーボウルとは、カニやエビなど素手で食べる必要がある料理で汚れた手を洗うための水が入った入れ物だが、手を洗うものと知らずにボウルの水を飲んでしまう人もいる。

ボウルの水という意味を取り除き「液体」とすると、この液体は「手を入れることができる」「飲むことができる」というアフォーダンスを同時に持っている。

マナーの知識・経験を積む以外で、液体を飲まないようにしてもらいたい場合、シグニファイアの考え方で「手を洗う」というフィンガーボウルの取り扱い方の手がかりを加えることで行動を誘導できる。

スープや飲み物の食器と材質を変える、食用でない花びらを浮かべるなどがシグニファイアでの改善例である。

ギブソンのアフォーダンスとデザイン

デザインにおいては、製品でどのような行為ができるのか使用者にわかりやすくすることが求められ、「形」ではなく「アフォーダンス」のデザインが目標となる。実際の利用現場で、利用者がどのような環境の変化の情報をとらえて行動しているのか探って、デザインに落とし込むことが大切である。

関連用語

  • シグニファイア

参考文献

参考サイト

スタートアップでデザイナーとして調査、UX設計、UIデザインとフロントエンド実装をやっています。UXも技術も日々勉強中!趣味は片付け、インテリア小物とゲームです。

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