消費者の購買モデルは1924年に提唱されたAIDMA(アイドマ)が一般的であったが、インターネットやSNSの登場に伴い、消費者の購買モデルには検索やシェアといった、それまでのAIDMAモデルに収まらない行動が見られるようになった。
このような消費者をアクティブコンシューマーと名付け、新たな購買モデルとして2004年に電通より提唱されたのがAISAS(アイサス)である。AISASもAIDMAと同じく、消費者が商品・サービスを知ってから購入するまでの一連のプロセスを分割し、それぞれフェーズの頭文字を取って表している。
- 商品・サービスを知り(注意:Attention)
- 興味・関心を持ち(関心:Interest)
- インターネットで検索し(検索:Search)
- 購入・申込をし(行動:Action)
- 商品・体験をインターネットで共有する(共有:Share)
スマートフォンを買うときのAISASのプロセス
新型のスマートフォンの購入を例にAISASを考えると、消費者は以下のような行動プロセスをたどる。
注意:Attention
2年近く同じスマートフォンを使用したが、CMで新型のスマートフォン宣伝が流れた。漠然と買い換えたいと思っていたので、新型スマートフォンが印象に残る。
興味:Interest
現在使用しているスマートフォンと比較して、新型はデザイン・機能ともに優れている。特に重視するカメラ機能が抜群である。実物を見に行く前に、まずはインターネットで検索して見ようとする。
検索:Search
Googlなどの検索ツールで検索してみるといくつかの結果がヒットした。早速買ってみた人のブログ記事や、Amazonの商品ページにおけるレビューに目を通す。カメラ機能は抜群らしいが、思ったよりも電池の保ちが悪いことがデメリットのようだ。毎日充電するのでこの点は問題ないだろうと思い、購入を決意する。
行動:Action
家電量販店またはケータイショップなど、実店舗で改めて確認してから購入した。(オンラインショップが充実している今日では、ブログ記事やレビューを読んでから、そのままオンラインで購入するケースもあるだろう)
共有:Share
手に入れたスマートフォンを眺める。改めてよい買い物をした。写真を撮ってSNSにアップしたり、口コミサイトに使い勝手のレビューを投稿した。あと何ヶ月か使ってみたら、改めてブログ記事を書こうと思う。
これまでの購買モデルAIDMAでは、興味:Interestの後に欲求:Desireが来て、記憶:Memory、行動:Actionと続き、購買に至るまでに何かを調べるようなことはない。インターネットの登場により、事前に調べる行動が一般的になったことで、AISASとして組み込まれたという経緯になる。
認知から検索につなげることがAISASの鍵
AISASの提唱者が電通ということもあり、このモデルは主に企業のコミュニケーション戦略に用いられることが多かった。
2000年代になり、テレビCMの多くに「続きはWebで」というフレーズが踊ったのを覚えている人も多いだろう。ライフカードが2005年~2007年の間に放送した『カードの切り方が人生だ』というCMが話題になったように、自社のWebサイトと組み合わせ、いかにCMから検索してもらうかというのが、AISASモデルにおけるコミュニケーション戦略の要だった。
Webからアプリへの移行が進み、より具体的な戦術が必要に
AISASの登場から15年以上が経ち、消費者が接する「インターネット」の意味も変わってきた。2018年の情報通信白書では、人々のスマートフォン利用時間がパソコンを抜いたことが示され、その傾向は今も継続している。また2017年のニールセン調査では、スマートフォン利用時間のうちアプリ利用が85%を占め、Webブラウザ利用はわずか15%となっている。AISASで想定していた「ネットで検索する」が変容してきている。
検索自体もWebブラウザではなく特定のアプリで行うという事例が増えている。TwitterやInstagramのように、特定のハッシュタグで話題を検索したり、行きたいお店に投稿されている画像から人気メニューや混雑状況を推測したりと、検索の仕方も様変わりしている。「買う前に検索する」という行動自体は不変でも、使うツールは大きく変わり、求められる情報の質も少しずつ変わっている。モデル自体の正しさの問題ではなく、より具体的な戦術が求められていると言える。
関連用語
参考サイト
- “Dual AISAS”で考える、もっと売るための戦略。|ウェブ電通報
- AISASはもう古い? 製品開発のための思考フレームワーク
- ~ライフカードCM『カードの切り方が人生だ』シリーズ~2015年度 第16回ACCパーマネントコレクション(CM殿堂入り)の受賞について
- 総務省|令和元年版 情報通信白書
- スマートフォンでは平均30個のアプリが利用され、利用時間の85%を占める ~ニールセン スマートフォンのアプリ利用状況を発表~|ニールセン デジタル株式会社
- Googleは使わない、SEO対策しているから——Instagram有名人のGENKINGが語った10代の「リアル」|TechCrunch Japan