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アンカリング(アンカリング効果) Anchoring effect

一番最初に接した、もしくは最も印象的な情報や数値が、意思決定や判断に影響を及ぼしてしまう傾向のこと
認知バイアスに属する心理原則のひとつ

意思決定や判断を必要とした時、人間はそのための基準を求める。しかし、それが常に正しいとは限らない。なぜなら、人間は、最初に知った、もしくは印象的な情報や数値を判断の基準に置いてしまう傾向が強いからだ。

例えば、下の画像のようなECサイトや店頭でよく見る、値下げを示す価格表示。左右を見比べたときに、どちらが“お得”と感じるだろうか?

プライスカード。右と左、どちらの値札がお得に感じるか?

おそらく、多くの人は左の方だと感じるのではないだろうか。これは、値引き前の価格が基準となりアンカリング効果が働いた結果である。

全てはアンカー次第

このように、最初に与えられる、もしくは印象に残る情報や数値のことを認知心理学や行動経済学では「アンカー(錨)」と呼ぶ。このアンカーは、一度決まると簡単には動くことのない強固な“重し”となる。

例えば、ある家電を買おうと価格比較サイトを訪れたとき、真っ先に目に止まる印象的な価格は「最安値」になるだろう。すると、その価格をアンカー(基準)として、その店舗と他の価格を提示している店舗の付帯サービス(送料無料や配送日時など)が差額として妥当かどうかの精査を始めることになる。

このように、人間は、アンカーを元にして関連する情報の優先付けなど情報整理を行ってしまう。そして、注目すべきは、アンカーが非現実的、非合理的であったとしてもそこに疑いの余地を挟むことが殆どないという点だ。

これには、人間は基本的に余計なものを排除し、ひとつの物事に集中してしまうという「フォーカリズム(焦点化の法則)」という心理原則も深く関ってくる。つまり、アンカーとなった情報に(本人の意志に関わらず)フォーカスしてしまうという具合である。

つまり、どんな情報や数値がアンカーになるか、によって、その人が感じる物の価値が変わってしまうということだ。

シンプルなアンカーが強い効果を生む

アンカーになりうるものは、必ずしも「価格」だけとは限らない。

Appleのサイトトップ

Appleサイトトップ (https://www.apple.com/jp/)

Appleのサイトを見ると、印象的なキャッチと美しいデザインのプロダクトが目に飛び込んでくる。もちろん、ここには「美的ユーザビリティ効果」も介在するわけだが、それと同時に、この「印象的なキャッチ」と「美しいデザイン」がアンカーになりうる事実を、彼らが十分に理解していることも分かる。

例えば、AppleのサイトでiPhone Xを見た後に、他社の新製品とバッテリーやカメラ性能など様々なスペック(仕様)や価格を比較したとしても、最終的には他社製品に対して「未来は感じられるか」、「美しいデザインだと感じられるか」の2点が気になる人が多いだろう。

アンカーは、非現実的、非合理的でも構わない。しかし、できるだけシンプルに違いを感じさせる情報や数値を用いることで、より強いアンカリング効果を生むことができる。

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