100%の成功や回避が約束された選択肢に対して、たとえ期待値が低くてもそれを選びがちになる。
この効果は、人間の非合理的なリスク回避や損失回避行動を説明するものであり、行動経済学の中心的な理論である「プロスペクト理論」に含まれる概念のひとつである。
提唱者

左:ダニエル・カーネマン、右:エイモス・トベルスキー(出展:http://grawemeyer.org)
ダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)とエイモス・トベルスキー(Amos Tversky)によって1979年に提唱された。
プロスペクト理論の中で、「人は確実な利益を選び、不確実な利益を過小評価し、損失回避の文脈では逆の行動をとる」と定義された。
デザイン上の利用方法と具体例
確実性効果は、安心感を与える情報設計や、行動を促す際の文言設計において特に有効である。
ユーザーは「不確実な選択肢よりも、結果が保証されている選択肢」を選びたがる心理を持つため、それを踏まえた設計が重要となる。
【利用の例1:リスク低減の明示による行動促進】
具体例:
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サブスクリプションの登録ページにおいて、「いつでも解約可能」「30日間全額返金保証」といった表現を用いると、ユーザーは不確実性を回避できると認知し、行動に移りやすくなる。
解説:
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ユーザーにとって「もし使わなかったら損かも」という不安が、「確実に返金される」ことで払拭され、導入ハードルが下がる。
【利用の例2:選択肢設計における確実性の演出】
具体例:
- フリーミアムモデルにおいて、「無料プランでできること」を明示し、リスクなしで体験できることを強調する。
- 「100%安全」「確実に守られるプライバシー」など、セキュリティや信頼に関わる要素を保証する表現。
解説:
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確実性の高い体験をあらかじめ提供することで、ユーザーは次のステップ(有料化や継続利用)への不安を減らせる。
【利用の例3:保険的サービスの販売促進】
具体例:
- Eコマースでの商品購入時に、「配送中の破損保証(+¥300)」のような保険オプションを提示。
- ユーザーは「不確実な損失」を避けるために、多少のコストを払ってでも「確実な補償」を選ぶ傾向がある。
プロダクト・コンテンツデザインにおける活用シーン
【シーン1:サービスの初期登録促進】
- 目的: 新規登録の心理的ハードルを下げる。
- 施策: 「登録後7日以内なら全額返金」「登録しても課金は一切発生しません」という表現により、確実性を高める。
【シーン2:コンバージョン率向上】
- 目的: 有料プランや上位プランへのアップグレードを促す。
- 施策: 「プラン変更後も今のデータは保持されます」「いつでも元に戻せます」といった説明を明示する。
【シーン3:リスクが高く見える場面での不安払拭】
- 目的: 利用継続や購入決断の促進。
- 施策: 「この操作をしてもデータは失われません」「変更前に必ず確認画面が表示されます」など、安心を与える設計。
補足:損失回避バイアスとの関係
確実性効果は、損失回避(Loss Aversion)と深く関係している。人は「得をする」よりも「損をしない」ことを重視する傾向があり、これが確実な損失の回避行動につながる。両者を組み合わせると、より説得力のあるデザイン戦略が可能となる。