古典的条件付け
Classical Conditioning

特定の刺激を無関係の別の刺激と合わせて繰り返し提示することで、無関係の別の刺激だけでも特定の刺激と同じ反応をするようになる学習手法。

条件付けという学習の一形態で、行動主義心理学の理論のひとつ。古典的条件付けを行うと、無意識の深層心理潜在記憶に影響を及ぼし、身体・感情の反応が変化する。刺激に応答(respondent)するということから、レスポンデント条件付け(Respondent Conditioning)とも呼ばれる。

1903年にロシアの生理学者Ivan Pavlovイワン・パブロフによって行われた「犬にエサを与える前にベルの音を鳴らすことを繰り返すと、犬はベルの音を聞くだけでよだれを垂らすようになる」研究観察が理論のもとになった。

この研究は「パブロフの犬」として一般的に広く知られ、パブロフ型条件付け(Pavlovian conditioning)とも呼ばれている。

イワン・パブロフ
(引用元: Wikipedia

古典的条件付けの仕組み

梅干しという刺激と、唾液が出るという反射を例に、刺激と反応の仕組みについて解説する。

梅干しを口に入れると、酸味によって唾液を分泌する。これは、特定の刺激に対して動物・人間が本来持っている無条件反射という反応である。

無条件刺激 (UCS; UnConditioned Stimulus)
無条件反射を起こす刺激。

無条件反射 (UCR; UnConditioned Response)
人間や動物が、本来持っている反応。

梅干しの写真という視覚刺激は、無関連反応を引き起こす中性刺激である。梅干しをよく知らない人が梅干しの写真を見ても「よくわからない」という反応をする。

中性刺激
無条件反射を起こさない刺激。

無関連反応
中性刺激によって起こる反応。

中性刺激を与えた直後に無条件刺激を与えることを繰り返すと、中性刺激だけで、無条件反射が起こるようになる。これを古典的条件付けという。
梅干しを食べる習慣がある人には、梅干しの写真をみただけでも唾液が出るという古典的条件付けが無意識のうちにされているが、梅干しを知らない人でも、繰り返すことで古典的条件付けをすることができる。

条件刺激 (CS; Conditioned Stimulus)
古典的条件付けに基づく刺激。

条件反射 (CR; Conditioned Response)
古典的条件付けに基づく反応。

強化と消去

条件反射の反応が起こるように刺激と反射の関係性を強めることを強化といい、条件反射の反応が起こらなくするようにすることを消去という。

強化(Reinforcement)

条件刺激を与えた直後に無条件刺激を与えること。

例)梅干しを見て、すぐに梅干しを食べる。

消去(Extinction)

条件反射が成立した後に、条件刺激のみを与えて無条件刺激を与えないことを繰り返すと、条件反射の反応が起こらなくなる。

例)梅干しを以前に食べたことがあるが、しばらく梅干しを食べていない(=無条件刺激がない)場合、梅干しを知っていても、見ても唾液は出ない。

自発的回復

消去によって反応が起こらなくなった後、しばらくしてから、ふたたび条件刺激を与えたときに条件反射が起こること。

広告などで活用される

古典的条件付けは、広告やパッケージなど日常的にみられる場で利用されている。

製品イメージキャラクターの芸能人の起用は、広告での活用の一例である。芸能人に対する好ましい反応を、製品に対しても持たせるために、CMで繰り返し製品とともに提示している。

特定の感情を呼び覚ますデザインに効果的

適切な刺激を盛り込んだビジュアル要素を活用すると、ポジティブまたはネガティブな連想をより強く呼び覚すことができる。

ポジティブな印象を製品に持たせる

魅力的な人々の画像と製品を同時に提示すると、製品に対して無意識に好ましい印象を持つ。

笑顔で遊んでいる子供と母親の幸せで楽しい印象を、製品の印象付けに活用している。

ネガティブな刺激で、望ましくない行動を抑止する

暴力や病気など不穏な画像を製品と同時に提示すると、製品への印象は否定的になる。

ブラジルやシンガポールでは、タバコのパッケージに肺がんの患者の悲惨な写真を警告のために表示することを義務付けている。

オペラント条件付けとの違い

関連する用語に、約35年後に提唱されたオペラント条件付けがある。

両者の大きな違いは、条件付けに自発的な行動が伴うかどうかである。

古典的条件付けは、受動的で対象は無自覚に条件付けされ、自発的な行動は伴わない。古典的条件付けで引き起こされる条件反射は、生物が本来持っている反応で、自分の意思でコントロールできない不随意運動である。

オペラント条件付けでは、「ブザーが鳴った後にレバーを押すと、餌が出てくる」というスキナー実験に代表されるように「レバーを押す」という自発的な行動と行動に対するフィードバックの刺激によって条件付けされる。

古典的条件付けが完了すると、反応を引き起こすトリガーの数が増えるが、反応の頻度は変化しない。パブロフの犬を例にすると「よだれを垂らす」という特定の反応を引き起こすトリガーに「餌の匂い」「餌の視覚刺激」に加えて「ベルの音」が増える。

オペラント条件付けが完了すると、自発的な行動によって反応頻度が増えるが、反応を引き起こすトリガーの数は変化しない。

行動 反応を引き起こすトリガーの数 反応頻度
古典的条件付け ・受動的
・無自覚に条件付けされる(不随意)
増える 変化しない
オペラント条件付け ・能動的
・自発的な行動で条件付けされる(随意)
変化しない 増える

関連用語

参考

この記事を書いた人:イケダマリカ

千葉大学・大学院でプロダクト・サービスデザインを学び、現在はメンバー5名の小さなスタートアップで1人デザイナーとして調査、UX設計、UIデザインとフロントエンド実装をやっています。UXも技術も日々勉強中!趣味は片付け、インテリア小物とゲームです。