人間の無意識のうちに働く心理はシステム1と呼ばれ、その性質の1つである”人間の連想能力”のことをプライミング効果と呼ぶ。
起源
アメリカの心理学者David Meyeと、Roger Schvaneveldtが1970年代初期の実験で導き出した効果。実験では、被験者にある文字列を見せる前に、それに似た意味を持つ単語を事前に見せておくと、その文字列をより早く認識したことが分かった。
具体例1(言葉の連想)
例えば、自分が動物園にいることを想像してみる。
動物園にはライオンやキリン、パンダ、ゴリラがいる。そこに一枚のカードが落ちていてカードには「コ◯ラ」と書いてある。この時、あなたは何を連想しただろうか?
恐らく、大半の人は「コアラ」を思い浮かべたのではないだろうか?他に考えられるケースとしては、「コーラ」や「コブラ」があるが、「コアラ」を思い浮かべる人が多いと思われる。
これは、「動物園」「ライオン」「ゴリラ」「パンダ」という言葉が先行刺激(プライム)となり、「コアラ」という単語(トリガー)を引き起こしたのである。当然、このカードが自動販売機の前に落ちていたら、「コーラ」を連想する人が多いと言える。
具体例2(行動への影響)
先ほどの例の様に、人は言葉が持つイメージを無意識のうちに連想させていることがわかる。この連想は行動にも繋がる。
例えば、ある心理学の実験で、若い被験者に「灰色」「忘れっぽい」「薄い髪」「孤独」等のお年寄りを連想させる言葉を見せたところ、被験者の振る舞いがまるでお年寄りのように変化したことが明らかになった。これもプライミング効果によるものである。プライミング効果により、言葉→イメージ→行動という順番で連鎖が起きるのだ。
デザインへの応用例
プライミング効果は、人の無意識の行動を誘導する方法の一つとして応用可能である。
ブログ記事「Using the Priming Effect to Improve UX」で解説されている、プライミング効果の応用例を紹介する。
この記事では、あるスマートフォンのショッピングアプリで、オンボーディングで、アプリの機能を解説するウォークスルー画面の例が出ている。
カテゴリーにアクセスする方法を解説するページのデザインで、アクセス方法の解説する文章の横に青色のスマートフォンのアイコンが置いて説明文を目立せている。この場面において、青色のアイコンは先行刺激(プライム)の役割を果たす。
ウォークスルー終了後、実際にユーザーがカテゴリー選択画面にアクセスすると、色分けされたカテゴリの中で青色のカテゴリである「電化製品」を最初のアクションとして押す可能性が高くなると言う。
小さなナッジとして利用しよう
製作者としては、ユーザーに思い通りの行動をさせたい場合があるかもしれない。この場合においては、「『電化製品』カテゴリのアクセスを上げたい!」もしくは「電化製品の売り上げを向上させたい!」などの思惑である。
しかし、どのような動機であれ、プライミング効果は小さなナッジとして用いるべきで、デザイナーはこの法則をダークパターンとして利用してはならない。