コホートは共通項のある集団(グループ)を意味し、特定の同一集団を観察、研究する言葉として、統計学や人口学、疫学などで使用されている。
コホート分析は、eコマースやWebアプリケーション等のユーザーを、経験数や利用開始月でグループ化して比較することで、サービスの成長度を測ったり、顧客の定着率を測るリテンションの課題を発見したりすることができる分析方法である。
成長や課題を発見できる
ECサイトの1月から5月の成長度を顧客単価で測った場合、コホート分析を使用せずに顧客単価の推移を調査した結果は以下の通りである。
一見すると、顧客単価に大きな推移はなく、成長度に変化がないように見える。コホート分析を行い、ユーザーをECサイトの初回利用からの経過月数に分けて調査した結果は以下の通りである。
初月利用の顧客単価を比較すると、1月時点では5,000円だったのに比べ、5月時点では9,000円に増加しており、サービスに大きな成長があったことがわかる。利用開始月ごとに顧客単価の時間推移で見ると、顧客単価が減少している課題も発見できる。
セグメンテーションとの違い
コホート分析の類似用語としてセグメンテーションがあるが、分析の切り口が異なる。セグメンテーションは、類似グループを同じ時間軸で比較するもので、ユーザーの居住地や、年齢、性別、家族構成などで比較する。
「東京都内に在住」というセグメンテーションに対して、サービス利用開始日ごとに分けて分析するなど、コホート分析とセグメンテーションを組み合わせて分析することもできる。
Google analyticsでのコホート分析
2015年にGoogle analyticsの中でコホート分析できる機能がリリースされた。あるサイトの訪問者を、訪れた週の単位でグループ化して何週間後に再訪するかを分析した結果を見てみよう。
多くのユーザーが訪問から1~2週間以内に再訪している。このことから、再訪したユーザーに閲覧してもらえるよう、2週間以内にブログ等を更新するよう運用を改善できる。
Google analyticsでは、分析しやすいように「コホートのサイズ」「指標」「セグメントの追加」の設定が任意に変更できる。
コホートのサイズ
ユーザーをグループ化する期間を設定する。日別、週別、月別を選ぶことができる。
指標
集計対象となる指標を設定する。ユーザーあたりのセッション数、セッション時間、ページビュー数や収益、目標完了数、ユーザー維持率などを選ぶことができる。
セグメントの追加
ユーザーを特定のセグメントに絞ったときのコホート分析結果を追加する。スマートフォンからのアクセスとなるモバイルトラフィックなどを追加できる。
UX設計と照らし合わせて分析する
ユーザー体験をカスタマージャーニーマップで設計したものと照らし合わせることで、課題発見や改善策を考えることができる。
ある旅行サイトでコホート分析を行った結果、特定のユーザーのみ初回に訪問してから2〜3日後に何度も再訪していることがわかった。
旅行の宿泊先を決めるまでのユーザー行動を調査したところ、何度も同じ宿泊先ページを訪問する行動があった。ユーザーの心情は、「宿泊先の候補はあったが、もっとよい宿泊先を探したい。キャンセル代が発生するので、予約が埋まりそうか定期的にチェックしながらもっと良いところを探したい」というものだった。
「宿泊先候補の予約状況を何度も見る手間」や、「他の類似宿泊先を探す手間」という旅行サイトの課題を発見できる。改善案として、宿泊先候補の追加、他の類似宿泊先をサジェスト、予約状況の通知といった機能の追加が挙げられる。
関連用語
- リテンション
- セグメンテーション
- カスタマージャーニーマップ
参考サイト
参考文献
- アリステア・クロール, ベンジャミン・ヨスコビッツ「Lean Analytics ―スタートアップのためのデータ解析と活用法 (THE LEAN SERIES)」角 征典(訳)オライリージャパン(2015)