制約
Constraint

システムで実行されうるアクションを制限する方法

制約には、物理的制約と心理的制約の2つがある。またそれぞれ、大きく3種類に分類される。いずれも制限を設けることで、利用者に実行可能なアクションを提示し、エラーを抑制したり快適に使用できるシステムを実現する。

制約の分類

物理的制約

物理的制約は、ものを利用する際、動きに物理的な制限を設けることで、実行できるアクションを限定するものである。大別すると可動経路、回転軸、障壁に分類される。

可動経路には、ライターのガス量調整のつまみ等がある。ライターのつまみは、経路上のみ可動させることができるため、利用者はその制限によって容易に調整方法を理解できる。

回転軸には、車のエアコンの温度調整タブ等がある。エアコンの温度調整タブは、回転させることで出力を調整し、それ以外のことはできない制限を設けている。

障壁には、USBの接続部分等がある。USBの接続部分は、利用者に接続可能な向きを伝えるため、正しくない向きでは接続できないように作られており、これにより正しい向きでのみ利用できる。

物理的制約の例

心理的制約

心理的制約は、人間の一般的な認識・思考を利用してアクションに方向付けをし行為を限定するものである。大別すると記号、慣例、対応付けに分類される。

記号には、トイレの男女表示等がある。トイレの男女表示は、男性用・女性用という一般的な表現を用いることで、簡易に正しい方向への誘導を実現している。

慣例には、信号機等がある。青は進め・赤は止まれというように、これまで刷り込まれてきた伝統に習うことで、実行可能なアクションを理解させる。

対応付けには、リモコン等がある。例えば音量の調整機能は、上下にボタンをマッピング(対応付け)することで、何ができるかを容易に理解させている。

心理的制約の例

D.A.ノーマンの定義

D.A.ノーマン氏は著書「誰のためのデザイン?」の中で、オートバイのレゴブロックの組み立てを例に挙げ、物理的な制約と並列に、心理的制約に類似する意味的な制約・文化的な制約・論理的な制約を定義している。

それぞれの制約は、書籍の中でレゴブロックの具体例を交えて次のように説明されている。

  • 物理的な制約:レゴブロックは接続可能な箇所が制限されている
  • 意味的な制約:オートバイにドライバーを乗せようとした場合、オートバイとドライバーは同じ方向を向くように組み立てる
  • 文化的な制約:POLICEという文字が書かれたブロックを接続する場合、正しく文字が読めるように組み立てる
  • 論理的な制約:部品が1つ残った場合、接続可能箇所も1つあれば、それはそこに組み込まれると考える
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D.A.ノーマン氏 (Wikipediaより)

制約の効果

物理的・心理的制約(ノーマン氏の定義含む)は、いずれもシステム利用者の前提認識を正しく理解してうまくデザインに組み込むことで、適切・快適なシステムの利用を促す

物理的制約は、特に異常な入力を排除してエラーの発生を抑える場面で有効であり、例えば入力値によっては危険な結果を招くようなシステムで効果を発揮する。

心理的制約は、シンプルに使い方を理解でき直感だけで操作が可能となるようなデザインのシステムを作るために効果的である。

なお心理的制約は、利用者の背景(文化や慣例)によって効果が左右されるため、特に利用する人のメンタルモデルを意識する必要がある。例えば信号を知らない人には、青で進めというアクションを促すことはできない。

参考

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菱井 康生

都内のIT企業でプロダクトマネージャーとして業務しています。UX領域に強い興味を持ち、日々の業務でもその領域の改善に熱を注いでいます。