ユーザーが実際に製品を利用している現場におもむき、(コンテキスト)利用状況の観察やインタビューを行うことで、ユーザー行動の根底にある潜在的なニーズを明らかにする調査手法。
1988年に Bennet と Holtzblattによって最初に考案され、7年後の1995年にBeyerとホルツブラッドによって完成した。
4つのポイント
コンテクスチュアル・インクワイアリは、下記の4つのポイントを念頭に置き実施する。
- コンテキスト
- パートナーシップ
- 相互解釈
- 集中
コンテキスト
インタビュイー(取材を受ける人)が実際に製品を利用する環境や状況に身を置いてインタビューを行う。
インタビュイーを会社の会議室に招くよりも、調査対象の製品やサービスを実際に利用する場所(BtoBシステムならインタビュイーの会社、自宅で利用するサービスならユーザーの自宅など)でインタビューを実施するべきであるため。
パートナーシップ(信頼)
調査中にインタビュアー(質問者)は、インタビュイーに「どのような行動をしているのか?」「その行動を取った理由はなぜか?」等の質問を何度も投げかける。信頼関係が成立していないと、インタビュイーが質問攻めされている気分になってしまい、本当に考えていることや感じていることを発信しなくなる可能性があるため信頼は重要である。
相互解釈
インタビュアーは、インタビューの途中でもヒアリングした内容の結論や解釈をインタビュイーに説明する。説明した結論や解釈が間違っている場合には、インタビュイーは解釈を正したり、補足情報を提供することで、双方の結論や解釈に齟齬が発生することを防ぐ。
集中
インタビュアーは、製品を改善するためにインタビューを行なっている。調査したい話題に焦点を絞ってインタビューを進めることが重要である。データを取得ために必要であれば、インタビュイーに特定のタスクを実行してもらうように依頼する。例えば、音楽プレイヤーのアプリが調査の対象であれば、音楽の取込というタスクを行ってもらうように依頼する。
3つの実施フェーズ
コンテクスチュアル・インクワイアリは、3つの実施フェーズに分かれている。
- 導入
- 本論
- 仕上げ
1.導入(信頼関係構築)
インタビュアーとインタビュイーが、信頼関係を構築するためのフェーズである。信頼関係を構築するために、インタビュアーは、自己紹介やインタビューの目的を伝えることでポライトネス(他者からよく思われたいという欲求)が働いてしまうことを回避する。
2.本論(調査の実施)
インタビュアーが事前に用意した計画に沿って、インタビュイーが製品を使用する様子を観察するフェーズである。必要に応じてインタビュイーに質問したり、ノートにメモを取る。インタビュイーが許可してくれるようであれば、録画や録音をすることもある。
ただし、必ずしも事前の計画通りにインタビューを実施する必要はない。インタビューの文脈に応じて聞き出した情報のうち、深掘りしなければいけないと判断した情報があれば、インタビューの質問内容や質問の順番を変更すべきである。
3.仕上げ(確認作業)
インタビュアーが観察した内容に対する解釈と結論を再度インタビュイーに伝えるフェーズである。インタビュイーはインタビュアーから伝えられた内容に誤解や不足している情報があると感じれば、誤解を解いたり、補足情報を提供する。
インタビュアーは、師匠の熟練した技術を自分のものにしようとする弟子の気持ちになり、インタビュー中に気になったポイントや、インタビュイーの意図や目的が理解できなかったポイントに対して、掘り下げて質問を行うことが重要である。
関連用語
参考文献
- (2018)「Contextual Interviews and How to Handle Them」,(参照2018-12-08) [online]https://www.interaction-design.org/literature/article/contextual-interviews-and-how-to-handle-them, (参照2018-10-25)
- (2011)その6「コンテキスチュアル・インクワイアリー法」ってなに?,(参照2018-12-08)
- (2014)「コンテクスチュアル・インクワイアリーのコツとツボを学ぶ ー 樽本徹也氏のインタビュー入門より」[online]https://uxxinspiration.com/2014/03/contextual-inquiry/,(参照2014-03-22)