選択肢が提示された際に、特に理由がなければ初期設定のまま選択を確定する傾向を指す。このバイアスは、選択を変更するための認知的努力や、変更による損失を避けたいという心理が影響している。また、デフォルト設定が推奨されていると無意識に解釈されることもある。デフォルト効果とも呼ばれる。
デザインにおける活用と注意点
デフォルトバイアスは、ユーザーの選択を誘導するためにデザインで活用されることがある。
例えば、フォームのチェックボックスを初期状態でオンにすることで、ユーザーがそのまま同意する可能性が高まる。しかし、この手法はユーザーの意図しない選択を誘導する可能性があり、ディセプティブデザイン(欺瞞的デザイン)と見なされることもあるため、慎重な設計が求められる。
具体的な事例
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オーガンドナー登録:一部の国では、臓器提供の意思表示がデフォルトで「同意」となっており、拒否する場合は明示的に手続きが必要である。この設定により、臓器提供者の割合が高くなる傾向がある。
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ソフトウェアのインストール設定:アプリケーションのインストール時に、追加のツールバーやソフトウェアのインストールがデフォルトで選択されている場合、ユーザーはそのまま進めてしまうことが多い。
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ニュースレターの購読:オンラインショッピングサイトで、購入手続き中にニュースレターの購読がデフォルトでオンになっていると、ユーザーは意識せずに購読を開始することがある。
提唱者と研究
ウィリアム・サミュエルソン 引用:ボストン大学
リチャード・ゼックハウザー(引用:ERI)
デフォルトバイアスは、1988年に経済学者のウィリアム・サミュエルソン(William Samuelson)とリチャード・ゼックハウザー(Richard Zeckhauser)によって提唱された「現状維持バイアス(Status Quo Bias)」の一形態として位置づけられる。彼らの研究では、人々が現状を維持しようとする傾向があることが示されており、デフォルトバイアスもこの傾向の一部と考えられている。ウィキペディア
図解:デフォルトバイアスのメカニズム
以下の図は、デフォルトバイアスのメカニズムを示している。ユーザーが選択肢を提示された際、デフォルト設定があると、そのまま受け入れる可能性が高まる。
[選択肢の提示]
↓
[デフォルト設定あり] → [変更には認知的努力が必要]
↓
[ユーザーはデフォルトをそのまま選択]
✅ まとめ
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定義:デフォルトバイアスは、あらかじめ設定された選択肢をそのまま受け入れる傾向を指す。
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デザインへの影響:ユーザーの選択を誘導するために活用されるが、過度な利用はディセプティブデザインと見なされる可能性がある。
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提唱者:ウィリアム・サミュエルソンとリチャード・ゼックハウザーによって提唱された現状維持バイアスの一形態。
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注意点:ユーザーの信頼を損なわないよう、透明性のあるデザインが求められる。
デフォルトバイアスを理解し、適切に活用することで、ユーザーにとって有益な選択を促すデザインが可能となる。
参考文献