ユーザーの気持ちをマップにし、気持ちを理解するために利用される。
主にUXデザインやサービスデザインの初期段階で活用され、ユーザー中心のアプローチを促進する。日本でも、英語表記のエンパシーマップと呼ぶことが多い。
提唱者と背景
共感マップ(エンパシーマップ)は、ビジュアルシンキングの専門家であり、コンサルティング会社XPLANEの創設者であるデイブ・グレイ(Dave Gray)氏によって考案された。
彼は、2010年に出版された書籍『Gamestorming: A Playbook for Innovators, Rulebreakers, and Changemakers』の中でこの手法を紹介し、以後、世界中のデザインやビジネスの現場で広く採用されるようになった 。
共感マップ(エンパシーマップ)の構成要素
共感マップは、以下の6つのセクションで構成されることが一般的である
- 考えていること・感じていること(Think & Feel):ユーザーが内面で考え、感じていること。
- 見ていること(See):ユーザーの視界に入る情報や環境。
- 言っていること・やっていること(Say & Do):ユーザーの発言や行動。
- 聞いていること(Hear):ユーザーが耳にする情報や影響。
- 痛み(Pain):ユーザーが感じている不安や課題。
- 得られるもの(Gain):ユーザーが得たいと望む利益や価値。
これらの要素を視覚的に整理することで、ユーザーの全体像を把握しやすくなる。
デザインにおける活用方法と具体例
1. UXデザインの初期段階でのユーザー理解
活用方法:ユーザーインタビューや観察から得られた情報を基に共感マップを作成し、ユーザーのニーズや課題を明確化する。
具体例:新しい健康管理アプリを開発する際、ターゲットユーザーである30代の働く女性の共感マップを作成し、彼女たちが抱える健康管理の課題や求める機能を洗い出す。
2. マーケティング戦略の策定
活用方法:ペルソナごとに共感マップを作成し、各セグメントの心理や行動を理解することで、効果的なメッセージやチャネルを選定する。
具体例:新製品のプロモーションを計画する際、若年層と中高年層のペルソナに対して共感マップを作成し、それぞれに響く広告コピーや媒体を選定する。
「この場面に使えるかな?」というシーンと具体的な事例
シーン:新規サービスのアイデア出し
課題:ユーザーの潜在的なニーズを把握し、革新的なサービスを創出したい。
活用方法:ターゲットユーザーの共感マップを作成し、彼らの未充足のニーズや課題を明らかにする。
具体例:高齢者向けの移動支援サービスを企画する際、高齢者の共感マップを作成し、移動時の不安や困難を洗い出し、それらを解決するサービスコンセプトを立案する。
共感マップは、ユーザー中心のデザインやマーケティングを実現するための強力なツールである。ユーザーの視点に立ち、その思考や感情、行動を深く理解することで、より効果的な製品やサービスの開発が可能となる。デザインプロセスの初期段階で共感マップを活用することは、ユーザーのニーズに合致したソリューションを創出するための第一歩である。
ペルソナと共感マップの違い
ペルソナと共感マップはどちらもユーザー中心のデザインを行うための手法であり、しばしば併用されるが、目的と表現方法に明確な違いがある。
ペルソナとは
ペルソナとは、製品やサービスの代表的なユーザー像を仮想的に構築したものである。市場調査やインタビューなどをもとに、名前・年齢・職業・ライフスタイル・価値観・行動パターンなどが詳細に設定される。
- 目的:設計チームが具体的な「誰か」に向けて思考や意思決定を行えるようにするためである。
- 形式:写真付きのプロフィール形式でまとめられることが多く、ストーリー性を重視する。
- 活用シーン:長期的なプロダクト戦略設計、マーケティング戦略の策定、ユーザーテストの対象像設定などに有効である。
共感マップとは
共感マップとは、ある特定のユーザーやユーザー群が「見ていること」「言っていること」「していること」「感じていること」などを視覚的に整理するフレームワークである。デイブ・グレイによって考案され、ユーザーへの共感を高める目的で用いられる。
- 目的:ユーザーの思考・感情・行動・環境を深く理解し、問題発見やニーズの洞察を促すためである。
- 形式:ホワイトボードやキャンバス上に6つの視点(Think, Feel, See, Say/Do, Hear, Pain/Gain)をマッピングする形式が一般的である。
- 活用シーン:デザインの初期段階、課題の発見フェーズ、ユーザーインタビューの整理などに向いている。
両者の併用例
たとえば、UXデザインプロジェクトにおいては、まず共感マップを用いて複数のユーザーインタビューからパターンや課題を発見し、その後、それらの情報を統合して代表的なユーザー像(=ペルソナ)を構築するという順序が効果的である。
関連用語
参考文献