人間が選択を行う際に「最も安い/最も高い」「最も小さい/最も大きい」といった 極端な選択肢を避け、中間的な選択肢を好む傾向を指す概念である。
「極端を選んで失敗するリスクを避けたい」という心理から中庸を取ることで、リスクや後悔の可能性を減らそうとする心理に基づいている。
例:
- カフェで「小・中・大」のコーヒーがあるとき、多くの人は「中」を選ぶ。
- 価格帯が「安すぎる/高すぎる」商品より「ちょうど中くらい」を選びやすい。
提唱者
イタマー・サイモンソン(Itamar Simonson)とエイモス・トヴェルスキー(Amos Tversky) によって1992年の研究 “Choice in Context: Tradeoff Contrast and Extremeness Aversion” で体系的に提示された。
デザイン上の利用方法と具体的事例
極端性の回避は、商品設計やUIデザインに応用することで、利用者の選択を意図的に誘導する効果がある。
価格設計
例:Sサイズ300円・Mサイズ400円・Lサイズ600円のコーヒーを用意すると、多くの顧客は「中間のM」を選ぶ傾向がある。
これは最安・最高を避けて「妥当な選択」をしたい心理によるものである。
UI/プラン設計
例:サブスクサービスで「ベーシック(500円)/スタンダード(1000円)/プレミアム(2000円)」を提示すると、多くのユーザーは「スタンダード」を選ぶ。これは中間が「安心できる選択肢」に見えるからである。
情報量の設計
例:ユーザーに表示するフィルタ数を「2個」「5個」「10個」としたとき、多くの人は「5個」を選ぶ。
少なすぎると物足りず、多すぎると複雑に感じるためである。
プロダクト・コンテンツデザインで「使える場面」
- 価格戦略:中間プランに誘導したい場合に有効。
- UX設計:ユーザーが「極端にシンプル/極端に複雑」なUIを避け、中庸を快適に感じる傾向を活かせる。
- 教育・学習設計:難易度設定において「極端に簡単/難しい」ものより「中くらい」を最も利用されやすいよう設計できる。
ゴルディロックスの原理との違い
ほぼ同義語として利用されているが、違いを以下に示す。
- 極端性の回避は「選択肢の相対的な位置」に基づいた現象。
- ゴルディロックスの原理は「ちょうど良い体験や刺激のレベル」に関する現象。
項目 | 極端性の回避 | ゴルディロックスの原理 |
---|---|---|
焦点 | 選択肢の位置(極端 vs 中間) | 体験の最適さ(大きすぎず・小さすぎず) |
心理背景 | 極端を選んで失敗したくない | 「ちょうど良い」状態が心地よい |
デザイン応用 | 価格設計、プラン設計(ベーシック/スタンダード/プレミアム) | UX難易度や情報量の調整(学習アプリ、UI表示量) |
例え | 「大でも小でもなく、中を選ぼう」 | 「熱すぎず、冷たすぎず、ちょうど良いスープ」 |