「フィールドワーク」という言葉は、調査活動全般を表すものであり、具体的な手法としてエスノグラフィやアンケート調査などが存在する。フィールドワークは元々、人文科学や自然科学、医療などの分野で行われていた。
製品やサービス開発での「フィールドワーク」は、調査対象が扱われている現地に足を運び、実物を直接観察することを指す。例えば、フィットネスに関するリサーチを行うのであれば、ユーザーを自社に呼び寄せてリサーチするのではなく、フィットネスクラブに訪れてリサーチをする。
フィールドワークを行う人を「フィールドワーカー」、調査対象者を「インフォーマント」または「話者」と呼ぶ。
インフォーマントから情報を収集することはもちろん、関連する資料やデータを集めることも、フィールドワークの一部である。例えば、フィットネスクラブへ行って調査を行う場合は、入会手続きの資料や壁に貼ってある案内物を集めることで、利用者がどのような体験をしているのかを把握できる。
期間は1日で終わる場合もあれば、数週間または数ヶ月行う場合もある。
フィールドワークの種類
フィールドワークは現地に訪れて行う調査全般を表すものであり、以下のような手法は全てフィールドワークの一部である。
- エスノグラフィー
- アンケート調査
- インタビュー調査
- 文献調査
いずれの手法でも一貫していることは、自社内で調査を終わらせるのではなく、ユーザーが普段から身を置いている環境にて調査を行っている点である。
フィールドワークの具体的なやり方
フィールドワークの流れは大きく分けて「実施前」「実施中」「実施後」の流れでリサーチを行う。
- 事前調査
- 実地調査
- フィールドノートの整理
1. 事前調査
事前調査は、リサーチの目的を明確にするために行う。
方法としては、インターネットや書籍、既に入手している資料等を元に、リサーチする対象について調べる。リサーチする対象・フィールドワーカーが複数存在する場合は、お互いが既に持っている情報を共有する。
アンケートなどの質問を実施する場合は、内容自体が分かりやすいかを回答してもらい確認する。質問内容の分かりやすさを担保しておくことで、リサーチがスムーズに進められる。実地調査を行う前に、調査結果の仮説を立てて置くと、リサーチ自体の評価を行うことができる。
ステークホルダーが複数存在する場合は、リサーチの目的と期待する結果を共有しておくことで、調査活動や調査結果を価値あるものとして認識してもらえる。事前にリサーチの価値を共有しておくことで、調査自体が意味のある活動になる。
2. 実地調査
現地に足を運んで調査を行う目的は、インフォーマントがどのようなコンテキスト(状況、環境)に置かれているのかを把握するためである。
コンテキストを把握するために、回答内容を記録するだけでなく、インフォーマントの許可をもらった上で、普段の活動を実際に行ってもらうことで貴重な情報を得られる。
実地調査を行う時のポイントは、調査を行う前にインフォーマントとのラポール(信頼関係)を形成することである。警戒心を抱かれていると、インフォーマントの本心や感情を聞くことができない。
ラポールを形成するために、すぐ質問を行うのではなく、インタビューの前に自己紹介を行ったり、調査自体の目的を伝えることが大事である。
インフォーマントに対するインタビューだけでなく、新しく入手できる資料があれば必ず集めておく。
3. フィールドノートの整理
集めた情報を「フィールドノート」として整理することで、インタビュアー同士の理解を深めたり、リサーチに参加していないチームメンバーへ共有する。
情報を整理していく過程で、自分たちのビジネスにおける重要な課題を発見する場合もあるので、調査から得られた仮説も書き残しておく。
関連用語
参考文献
- スティーブ・ポーチガル (2017)『ユーザーインタビューをはじめよう』安藤貴子訳, ビー・エヌ・エヌ新社