ユーザーの大半を無料にしても、有料プランでビジネスが成り立ち、一般的に95%のユーザーを無料にしても、5%の有料ユーザーで収益が成り立つため「5%ルール」とも言われる。この数字はあくまで目安であり、ビジネスモデルによって数値は変わる。
フリーミアムは「フリー(無料)」と「プレミアム(割増)」を合わせた造語である。ユーザーが拡大してもコストが比較的かかりにくいデジタルサービス・コンテンツで広く普及した。
ゲームなどのソフトウェアを一定期間無料で提供する手法は1980年頃から行われていたが、2006年にベンチャー投資家のFred Wilsonがフレーミアムの名前を自身のブログで募集したことで広く知られるようになった。
Googleドライブのフリーミアム
Googleドライブは無料でクラウドサーバにファイルをアップロードでき、10億人以上のユーザーが利用している。15GB以上を利用する有料ユーザーは少ないが、5%いれば5000万人となり、最安プランの250円/月であったとしても、125億円/月の収益となる。
無料提供の種類
無料でのサービス提供範囲は、有料よりも当然制限される。制限の仕方はいくつかあり、30日まで無料などの時間制限、無料では個人利用だけで、チームで利用する機能は制限される機能制限、創業間もない企業だけ無料にする顧客のタイプによる制限などがある。
無料提供の種類と例
時間制限
14日間だけ無料(ECサイトプラットフォームShopify)
機能制限
3人以上の通話では40分まで(ビデオ会議システムZoom)
顧客のタイプによる制限
会社設立24ヶ月以内(プレスリリースプラットフォームPRTimes)
コストが少ないデジタルサービス・コンテンツと相性良い
非デジタル商品の販売ビジネスは、製造コストや仕入れの原価コストが発生するだけでなく、小売店への物流費など多くの費用が必要である。一方、Webサービスのデジタルサービスやコンテンツは、開発費以外のコストがほぼ発生しないため、少ないコストで提供することができる。
フリーミアムはグロースに強力!
少ないコストで多くのユーザーを獲得できれば、資本力のないスタートアップでも大きく成長できる可能性がある。
フリーミアムで成功したビデオ会議システムのSkypeは、誰でも利用できるインターネット回線で無料通話の提供を実現した。大きなコストで通信網を用意し、通話料で収益化していた従来の大手通信企業の顧客を奪い、4億人のユーザーを獲得し大きく成長した。
価値がなければ成立しない
注意しなければならないのは、無料であればフリーミアムのビジネスモデルが使えるというわけでない。たとえ無料でも魅力的なサービスでなければ使われない。当然、有料はさらにユーザーが利用したいと思わなければビジネスとして成立しない。
無料で提供する前に、サービスが顧客にとって価値があるものか、どれくらいの価格に見合うものなのか検証する必要がある。
起業家へコーチングを行うアッシュ・マウリアは、必ず有料のサービス提供から始めることを推奨している。無料提供から始めてしまうと、無料サービスの範囲を拡大し過ぎる、無料ユーザーが増えることに満足する、無料ユーザーの要望や意見に惑わされて、有償顧客に注力できなくなる、などのリスクを述べている。
無料提供から始めるリスク
- 無料サービスの範囲を拡大し過ぎる
- 無料ユーザーが増えることに満足する
- 無料ユーザーの要望や意見に惑わされて、有償顧客に注力できなくなる
UX設計ができていれば、広告費さえも削減できる
魅力的なサービス提供するにはUX設計が活躍する。ユーザーが求めているものがわかれば、広告費さえも抑えることができる。従来のようなテレビや街中のポスターといったマスメディアを利用した広告費をすぐに使う必要がなく、SNSのシェアや口コミから、顧客がインターネットで自社サイトを訪れるインバウンドが活用できる。
関連書籍
- アッシュ・マウリャ「Running Lean ―実践リーンスタートアップ (THE LEAN SERIES)」角 征典訳 オライリージャパン(2012)
- アレックス・オスターワルダー, イヴ・ピニュール「ビジネスモデル・ジェネレーション」小山 龍介(訳) 翔泳社(2012)
- クリス・アンダーソン「フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略」小林 弘人 ,高橋 則明訳 NHK出版(2016)
参考サイト
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