フット・イン・ザ・ドア
Foot-In-The-Door

簡単な要求に同意してしまうと、関連する内容の大きな要求にも段階的に同意しやすくなる心理作用

人は自分の言動に一貫性がないと気持ち悪さを感じてしまう。簡単で小さい要求に同意した後は、徐々に要求が大きくなっても同意しやすくなる心理作用をフット・イン・ザ・ドアという。

名前の由来は、往年のセールスマンたちが訪問販売の時に使っていた、扉とフレームの間に足を入れてドアが閉まらないようにし、まずは話を聞いてもらうという荒々しい行動からである。

1966年、スタンフォード大学のJonathan Freedmanジョナサン・フリードマンと、Scott Fraserスコット・フレイザーが発表した論文 「圧力をかけないコンプライアンス:フットインザドアのテクニック(Compliance without pressureコンプライアンス ウィズアウト プレッシャーThe foot-in-the-door technique.ザ フットインザドア テクニック)」で提唱された。

肖像ジョナサン・フリードマン

ジョナサン・フリードマン
画像引用:Jonathan L. Freedman

要求の一貫性とバランスが必要

フット・イン・ザ・ドアは、小さな要求から徐々に大きな要求へとステップアップする。しかし、いきなり大きな要求や一貫性のない要求を持ちかけられると、同意しにくくなる。

フット・イン・ザ・ドアでおねだりが実現する

子:「お父さん、友達と映画に行ってもいい?」

親:「映画か、楽しんできなさい」

子:「でもチケット代足りなくて…お金を少し貸してほしいな」

親:「そうか、わかった、5,000円で足りるか?」

子:「ありがとう!帰りに迎えに来てくれると嬉しいな。」

親:「それなら、映画が終わったら迎えにいくから連絡してくれ」

友達と映画を見に行くという、控えめな要求からスタートして、映画のチケット代を借りるだけではなく、最終的には映画館へ迎えに来るよう要求をステップアップさせている。

フット・イン・ザ・ドアのテクニックを利用した親子の会話例

フット・イン・ザ・ドアでは、小さな要求から次第に大きな要求へと変化させていく。

要求が一貫して「映画に行くこと」に関連しており、大きさも段階的に引き上げている。要求に自然と同意してもらえるかどうかは、前後の一貫性と、大きさのバランスが影響する。

人は自分の価値観と言動を一致させたがる

要求は一貫性があると同意しやすくなる。最初の質問で「環境保全に興味はありますか?」と問われ「興味がある」と返答した場合、その後に「週末の植林ボランティアに参加しませんか?」と続けて誘われると、「”環境保全に興味があると回答したのだから、自分は植林ボランティアに参加すべきだろう”」という思考が働き、要求に同意しやすい。

価値観と言動を一致させたがる

突然すぎる大きな要求は判断に影響を与える

大きな要求から依頼されると要求自体を受け入れない

大きすぎる要求は、後に続く要求に対する判断に影響を与える。

最初の要求が大きすぎて拒否した場合、次に似ている規模の要求を提示されても応じたいと思わなくなる。

大きな要求から依頼されると要求を受け入れない

要求が突然大きくなり過ぎると受け入れにくい

要求の差が大きすぎると、応じたい気持ちは減少する。場合や人によって変わるが、一般的に「100円を貸して欲しい」というお願いを承諾した後、すぐに「追加で10万円貸してほしい」という要求があっても応じたいと思わないだろう。

後の要求が大きすぎると受け入れにくい

報酬をもらうとモチベーションに影響を与える

一度でも相手の要求に応じることに報酬が発生すると、常に報酬が無いと同意しにくくなる。

自らすすんで「受け入れたい、やりたい」と思って行動する内発的動機付けに対して、報酬や評価、強制や罰則といった、外部からの働きかけで行動する外発的動機付けがある。外発的動機付けによって、やりたいというモチベーションが減少してしまうことを「アンダーマイニング効果」という。

ロチェスター大学のMiron Zuckermanミロン・ザッカーマンMichele M. Iazzaroミケーレ・M・イアザロDiane Waldgeirダイアン・ウォールギアによって、アンダーマイニング効果がフット・イン・ザ・ドアに与える影響の実験が行われた。

金品を与えられると次の要求に無償では応じにくい

被験者をA、B、Cの3つのグループに分け、「5分のインタビュー(小さな要求)に参加した数日後に、25分のインタビュー(大きな要求)に応じるか」という実験を行った。

グループAは、5分のインタビューの時に金銭的報酬を与え、グループBは報酬を与えなかった。グループCは5分のインタビューは行わず、25分のインタビューのみ依頼した。

実験の結果、25分のインタビューへの参加率は、グループAは33.3%、グループBは64.3%、グループCは45%という結果になった。

実験結果表

報酬を与えたグループAは、報酬の無いグループBや、いきなり大きな要求をされたグループCより参加率が低かった

フット・イン・ザ・ドアの手法を行わなかったグループCよりも、報酬を与えてアンダーマイニング効果を発生させたグループAの参加率が低くなった。

フット・イン・ザ・ドアでは、むやみに金品などの報酬を用いるのではなく、「価値観」や「行動」を具体的に褒めたり、相手に対して「あなたならやってくれる」と期待をかけることで、「要求に応じたい」というモチベーションを保つことができるだろう。

要求のステップアップはウェブサイトでも活用できる

フット・イン・ザ・ドアはウェブサイトでも活用されている。資料ダウンロード時のメールアドレスの提供、無料トライアルの開始、SNSへのシェアなどを最初の要求とし、最終的に製品購入や、プラン契約といったコンバージョンに繋げるものだ。

イギリスのECサイト専門のデジタルエージェンシー「Endless Gain」は、無料のEブックをダウンロードする際に、名前とメールアドレスの提供を最初の要求としている。

Endless Gain

UKのECサイト専門のデジタルエージェンシー「Endless Gain」における、資料ダウンロード時のメールアドレスを提供する(引用:endlessgain.com/

オンラインでフット・イン・ザ・ドアを利用する際にも、要求の一貫性と、大きさのバランスに注意する必要がある。事前に全体のフローや要求内容を可視化して、情報設計を行うべきである。

人を騙すダークパターンに陥らないように注意する

製品やサービスを利用するユーザーに、フット・イン・ザ・ドアのテクニックを悪用してしまうと、必要のない製品を買わせたり、ユーザーが意図していない契約をするようにコントロールできてしまう。

ユーザーはコントロールされていることに気づくと、企業や製品に不信感を抱いてしまう。短期的な売上は見込めるかもしれないが、長期的に見るとユーザーが定着せず、企業にとって悪い口コミを広めてしまう可能性がある。

フット・イン・ザ・ドアは、ユーザーの行動をコントロールするダークパターンに悪用するのではなく、ユーザーの選択を後押しするナッジとして活用すべきである。

関連用語

レシプロシティの法則

感情的資産

ナッジ

認知的不協和

アンダーマイニング効果

エンハンシング効果

ツァイガルニク効果

期待効果(ピグマリオン効果)

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参考文献

参考サイト

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nayumi

東京在住のWEBデザイナー。
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